こころに写るもの 6
岩渕まこと
写真はデジタルかアナログかという議論も最近では落ち着いてきたようです。私は一時フイルムで撮っていましたが、ある時からデジタル一本槍になりました。
アナログからデジタルへ移行していくことは自然な流れということもできますが、その影響を受けてしまう方々もいます。写真の場合は現像が減って町の写真屋さんが無くなりました。
音楽の世界でも同じことが言えます。今は簡単にパソコンの中にスタジオを持つことができます。多重録音はもちろん、ひとりで全部の楽器を演奏し、録音することができます。このデジタル化のせいで、職を失ったミュージシャンも少なくありません。
他方ネットショップという便利なものも生まれました。私も教科書販売の大手、東京書籍のウェブショップ「音楽専門館」に「MAKOTO BOX」というお店を出店しています。星野富弘さんとのコラボで生まれた曲のダウンロードとピアノ伴奏用にアレンジされた楽譜がダウンロードできます。これはデジタルならではのサービスです。上手に使うとデジタルは便利なものです。
ところで最近は若者達がフイルムカメラやレコードに惹かれていると聞きます。アナログ帰りということでしょうか。事実、私たちはスピードや正確さを求めるのと同じくらい、プロセスや味を求めます。便利も良いですが、不便も捨てがたいものがあります。
そういえば愛を注ぐ対象は面倒をかけてくれるものが多いかもしれません。少なくとも我が家の愛犬ブギーはそうです。不便なアナログと便利なデジタルの間で、結局私たちは愛情を発揮する場所を探し続けているのかもしれません。