ずっこけ宣教道 新連載 ロシア篇
松本望美
北朝鮮宣教会所属
東シベリアに行ったことがある。
古着やらなんやらたくさん抱え、ロシアの某都市に到着したのだが、さすがに共産圏の香りがする殺伐と冷たい感じのする空港で、税関も愛想などない。
ある日、飛行機を乗り継いで、違う街に行くことに。私たちの乗る飛行機はなんとプロペラ機。機体に乗ってみれば、なんと床は板張りだ。誰かが酔ってしまった形跡がそのまま残っている。「これ、大丈夫かな?」と隣に座ったメンバーに言えば、「イエス様がともにいるから大丈夫!」と満点のお答え。プロペラ機は、ブルブルブルと音をとどろかせて、針葉樹海の上を飛び続けた。
東シベリアにブリヤート共和国というロシア連邦を構成する共和国がある。バイカル湖に面し、もともとはモンゴル系民族の居留地であった。文化人類学的な説によると、日本人の起源とも考えられているそうだ。
「モンゴル系」といえば、私は外国に行けば必ずモンゴル人と間違えられる。韓国で切符を買い求めていたら、「モンゴルからの留学生?」と聞かれ、アメリカの税関でも、「パスポートは日本でも、実はモンゴル人でしょ?」と訳のわからないことを質問されたことがある。
さて、そのブリヤート共和国で、ある家庭に招待された。大きなテーブルを囲んで、食事を頂きながら、「なんだか親戚のおじさんに似てるな、この人」と数人の顔を見ながら思った私。
そして、食後、お茶を飲みながら自己紹介をしましょうということになった。一人一人英語で名前などを言っていくのだが、私の番になって話し出すと、周りにいた数人のブリヤートの方々が現地の言葉で何やら言っている。「わかりません、日本人なので」と言うと、彼らは驚き、「ブリヤート人じゃないのか!」と目を丸くし、のけぞっていた。
さて、この地域に住むユダヤ人たちがイスラエルに帰還したいと願っているそうだ。世界に散らされたイスラエル人が再び祖国に帰ってくるという預言は聖書の至るところにあって、実際、九〇年代に冷戦が終決し、ソ連が崩壊後に大量のユダヤ人が旧ソ連からイスラエルに帰還しているそうだ。
荘厳な建物のロシア正教の教会が、共産圏の影の残る街をバックにたたずんでいる中で、私たちを案内してくれたロシア人の牧師の教会は丸太小屋のような建物だったが、命があった。教会は迫害者によって何度か壊され、牧師は暴漢に襲われて重傷を負ったこともある。牧師の、静かながらも力強いメッセージからは、何者にも屈しない、決して引き離すことのできない神の愛が伝わってきた。
ロシア民謡のようなメロディーのロシアの賛美歌が静かに流れて魂に響き、当然のことだが、神の福音は世界中同じで、真理は揺るがないのだと再確認させられた。本当に私たちの信じる神は、「死んだ者の神ではなく、生きている者の神である」(マタイ二二・三二参照)。