となりの人々 1 新聞配達

新聞配達
森住 ゆき
日本福音キリスト教会連合 前橋キリスト教会会員

 冬の朝、玄関のあたりで小さくブレーキのきしむ音がすると厳粛な気持ちになる。夜明けにはほど遠い午前4時。外気は氷点下。空にはまだたくさんの星がまたたいている頃なのに、と。

 「朝は何時に起きるのですか」と、今回モデルになってくれたSさんに聞いてみたら「あ、起きるのは12時っすね」と言うので絶句してしまった。”12時に起きて”、仕事が終わる6時頃から再び不足分の睡眠をとる。慣れるまでは頭痛に悩んだりもしたが、「今はもう大丈夫」だそうだ。

 前カゴに大量の新聞を収めるのにも配り手によっていろいろな型があるようなのだが、新年の配達はことさらご苦労だろう。本紙の他に特集が何部もあるし、そこへ膨大な初売りのちらしが加わって一家庭分でもずっしりと尋常でない重量を感じるのだから。

 新聞配達に関わっている方々の背景はさまざまだと思う。でも、真夜中に起き出して、厳寒の夜明け前にそれを配り尽くすというのは、一種独特の使命感がなければやはり果たせない仕事のような気がする。販売店の店先で自転車をスケッチさせてもらっていた時、手袋を何気なくスキーの時のような防寒タイプに描いたら、Sさんに「手袋は必需品ですが、そういうのはしないっすよ。軍手でないとすべって新聞がさっと取り出せないんで」と言われた。