となりの人々 4 介護の仕事
森住 ゆき
日本福音キリスト教会連合 前橋キリスト教会会員
私の記憶の中の、病棟勤務の看護婦さん(今は看護士さん)や看護助手さんはいつも小走りに駆けている。実際に廊下を走っていたわけではないけれども、ゆったりまったり歩いている人がいなかったのだ。
検温、容態の聞き取り、薬の配布、注射、点滴交換、体の清拭、夜間の巡回。そして絶え間なく鳴り続けるナースコール。患者から眺めた景色をざっと並べただけでこうなのだから、見えない部分の業務をあわせると大変な仕事量をこなしておられるのだろう。
人間は弱い。どんなにクールな大人でいたいと思っても、強い痛みが続けば、数日で心理的にはあっけなく幼児同然になってしまう。医学の力が人の痛みに追いつけないとき、看護士さんの語りかけや、微笑みや、体に触れる手のひらのあたたかさは特別な意味を帯びてくる。自分のところに来てくれる、その足音にさえも、ふっと痛みがほぐれることがある。
「つらい時期を乗り越えて、患者さんが元気に退院してゆく姿が一番うれしい」という看護士さんとお話してみると、多くの方が、小さなお子さんがいらしたり、受験生のお母さんだったりもする。困難と緊張が伴う働きを通して、人に仕え、少しでも人を幸せに近づけることで、自らが満たされる仕事。人─神の似すがた─にしかできない仕事だなあと思う。