となりの人々 9 イエス様と同じ職業
森住 ゆき
日本福音キリスト教会連合 前橋キリスト教会会員
パン職人でも、農夫でも、漁師でもなく、イエス様はなぜか大工。映画「パッション」の中では、イエス様が自宅の作業場でテーブルを製作している姿が出てくる。ごく短いシーンなのだけれど、地味な作業に黙々と取り組むその場面は、あの激しく熱い映画の中で、静かな気品を秘めた印象的な場面として心に残っている。
知人のI兄は、昨春、工業大学を出て工務店に弟子入りして修行中だ。小学校の通学路から見た建築中の家が日に日に完成してゆく様に魅了されて以来の夢だったそうだ。真夏の炎天、厳冬の低温など、気象条件に容赦なく左右され、常に危険と隣り合わせなので、「祈らずにはとてもできない」仕事だそうだ。イエス様もそうだったのかしら。
「大工の仕事は黙々、コツコツ型の自分に向いているように思う。今は現場の仕事をしっかり覚え、いずれ設計もやってみたい。いつの日か教会建築にかかわれたら幸せ」とI兄は言った。
ヨハネの福音書の中で、律法学者やパリサイ人に議論を挑まれ、取り囲まれたイエス様が黙って地面に何事か書いている場面がある。内に思いを秘めて、挑発にのらず、かといって相手を無視しているのでもない。この時イエス様はこの世界に今まで人間が考えたこともないような建物を黙々と築いておられたのかも。とにかく、私はこの場面がとてもとても好き。