なぜ今、ロイドジョンズなのか? 聖書の真理は変わらないと教えてくれる
鈴木 英昭
日本キリスト改革派教会 名古屋教会
ロイドジョンズ(一八九九年十二月二十日~一九八一年三月一日)が天に召されてから、間もなく四半世紀が過ぎようとしている。今回、出版された書籍に収録されている「教会とは何か?」も、一九六八年に英国福音主義協議会(BEC)で語られたものであれば、四十年ほど前に語られたものということになる。
一回の講演に過ぎないため分量は少ないものの、内容は深く豊かであり、聖書の教会とはどんなものであり、どんなものでないかを明らかにしてくれる。その内容は少しも古さを感じさせない。むしろ講演がなされた当時よりいっそう新鮮さを持つほど、教会には問題がかえって多くなっていることや、その対応の道を明らかにしてくれるので、聖書の真理は少しも変わらないということを教えてくれる。
ロイドジョンズは二十七歳の時、外科医から伝道者になるようにという神の召命に応えた。身体の治療だけでは不十分であると医学の力に限界を感じ、信仰を伝える説教者になるべく方向転換したのだった。そして、ウェールズでの働きの後、一九三八年九月から、牧師であるキャンベル・モルガンの協力者として、ロンドンのウェストミンスター・チャペルで働き始め、モルガンが約四十年間の牧師としての務めから引退した一九四三年に、後継者となった。しかし、この交代は簡単ではなかったようで「あのカルヴィニスト(ロイドジョンズのこと)もモルガン牧師と一緒に辞めるべきである」という声のあったことが知られている。
筆者は、二十代の末に、ロンドンでの研修のために滞在していた一九六四年の数か月の間に、ロイドジョンズが牧会していたウェストミンスター・チャペルや、当時ジョン・ストットが牧会していたオールソウルズ教会の礼拝に参加する機会が、それぞれ数回ずつあった。
ウェストミンスター・チャペルでは、礼拝後、希望すれば誰でも、大きな別室でロイドジョンズに会うことができた。私もそこにあいさつに行き、ロンドンに来ている理由や出身教会のことを告げると、IVFのO・バークレー総主事に会ったか、会ってないなら、必ず訪ねるように言われた。
IVFとは、大学生伝道と信者になって卒業したOBの教育や交わりを助ける団体で、英国での福音主義運動の中心のひとつである。当時、すでにその働きの成果が現れ始め、ロイドジョンズがその団体の会長の立場にあったのだった。
ロイドジョンズは、一九六八年に大きな手術をし、体力の衰えを感じたことから、引退の決意をした。引退してからは、これからは世界中の教会全体のために働きができるようになったという喜びと励ましの声が、各国から多く寄せられた。「聖霊の偉大な力によって先生の聖書の解き明かしによって、降り注がれた富を、他の人々にも分け与えられることを喜んでいます」という内容の多くの手紙が送られてきたという。その後も、世界各地で精力的に講演をした。
引退から約三十年後、一九七一年に病気が再発。それでも講壇へ立つ思いは絶たれなかった。講壇に立つことができなくなってからも、説教原稿は書き続けた。だが、それもできなくなった一九八一年二月の終わりに、彼は家族を呼び、「もう癒しのために祈らなくてもよい、私の栄光への道を妨げないでほしい」と語ったという。そして三月一日、一九七二年からはエペソ書の連続講解説教が刊行されたのをはじめとして、今もなお、彼の説教は読まれ続けている。
あくまでも聖書に基づき、決して時勢に流されることのない説教を語り続けたロイドジョンズの姿勢には、現在を生きる牧師も信徒も学ぶ必要があるのではないだろうか。