武井 博
横浜カルバリーチャペル牧師

若いときから本好きだった私も、聖書だけには興味を感じませんでした。自分とは全く別世界の書物のように思えたからです。しかし、四十九歳のときに思いもかけない苦難に遭遇しました。娘がキリスト教系の異端の宗教に入り、行方がわからなくなったのです。そこで仕方なく、キリスト教会に救出をお願いしに行きました。そこで聖書を読み、礼拝に出席するようにと言われ、新しい生活が始まったのです。
聖書を旧約聖書から読み進むうちに、ドキリとさせられるみことばに出合い、「これは容易でない書だ」と実感するようになりました。例えば、「ヨブ記」三六章一五～一六節のことばです。
「神は悩んでいる者をその悩みの中で助け出し、そのしいたげの中で彼らの耳を開かれる。まことに、神はあなたを苦しみの中から誘い出し、束縛のない広い所に導き、……」
もしや私の今の状態と、これからの未来のことを言っているのではないかと思いました。すると興味津々、当時はテレビ・ディレクターで多忙を極めていましたが、四か月くらいで旧約聖書と新約聖書を読み終えました。特に新約聖書では、みことばに感動して鳥肌が立つ経験をしました。そうして、聖書に全く関心のなかった私が、全面降伏をして、神様を、イエスさまを信じる者に変えられました。家内と一緒に程なく洗礼を授けていただきました。
しかし、個人的な私たちの難問はなかなか解決されず、かえってもっと悪い方向へと進んでいきました。けれども、神を信じ、イエスさまを信じて、心の平安をいただきながら、その試練に耐えることができました。すると、七年余が過ぎ、何と娘は自分の意志で帰ってきたのです。私たちは、ひれ伏して神様を崇めました。それから私は、五十七歳で神学校に進み、さらに六十三歳で牧師として伝道生活に入りました。まさかの転身でした。神様の憐れみによって、十二年間で百七名の方々が洗礼をお受けくださいました。
今私は、ほかの書物を天に届くほどに積み上げても、この一冊の聖書の豊かさにははるかに及ばない、と何百回でも宣言することができます。聖書を敬遠してこられた皆さん、だまされたと思って読んでみてください。こんな貴重な真理の書はほかにありません。聖書は、神の霊感を受けた人々が神から預かった神のみことば集です。だから、どんなに時代を経ても〝改訂版”を出す必要のない「真理の書」なのです。この聖書を読まないで人生を送るなら、それは取り返しのつかない大損失です。聖書を読んで、時代や環境に流されない真実の生き方をなさってください。と言っても、聖書は必ずしも分かりやすくはありません。ですから、予備知識をつけることをお勧めします。
私が文章を担当した『聖書ものがたり絵本』は、親子で一緒に楽しく読め、しかも、小林豊先生の素晴らしい絵の助けがあります。この絵本は聖書全体の流れを重視し、聖書がよくわかるように書きました。ですから、初めて聖書を読まれる親御さんにも、またこれから新しい時代に生きる子どもさんにも、最適の案内役になると信じています。ぜひ、ご一読ください。

雄大な画と躍動感あふれる文！
新約は2013年春刊行予定

『聖書ものがたり絵本』
旧約全３巻武井博 文／小林豊 画
56頁　各1,680円