わが家の小さな食卓から
愛し合う二人のための結婚講座
第2回 家族の思い出を振り返る
大嶋裕香
1973年東京生まれ。宣教団体でキリスト教雑誌の編集、校正を手がける。99年にキリスト者学生会(KGK)主事の夫と結婚後、浦和、神戸、金沢と転々としながら年間100~200名近い学生、卒業生を自宅に迎える。KGKを中心に、夫と共に結婚セミナーで奉仕。その傍ら、自宅でパン教室、料理教室を開き、子どもたちにパン作りを教えている。13歳の娘と10歳の息子の母親。
わが家の食卓で結婚前のカップルとしている学びの二回目。テーマは家族についてです。
「家族のあたたかい思い出、悲しい思い出は何ですか?」「家族が大切にしてきたことは何ですか?」という質問について三つずつ書き出し、分かち合います。
生まれ育ってきた家族の影響はとても大きいものです。各家庭の文化を背負った二人が結婚し、新しい家族を形成していくときに、バックグラウンドの違いに驚かされることが多々あります。
私たち夫婦は、夫が京都出身、私は東京出身です。ことばも味も文化も違います。自分が当たり前だと思ってきた習慣が夫の当たり前ではない、ということを知ったときの驚き! 特に結婚当初はカルチャーショックの連続でした。
お互いの違いを知ること、相手の家族を知ることはとても大切です。家族が大切にしてきたことを共有し、これから、どんな家庭を形成していきたいかを話し合うことができます。というのも、結婚前に家族のあたたかい思い出を振り返ることで、こういう点は取り入れていきたいと気づかされたりするからです。逆に悲しい思い出を振り返ることで、こういう点は避けたい、気をつけようと思わされたりします。
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今まで十五組の夫婦との結婚の学びや結婚セミナーをしてきて、「家族のあたたかい思い出」としていちばん多かったのは、「家族旅行」でした。豪華旅行でなくとも、家族と過ごした思い出はしっかりと心に刻まれているのです。また、家族共に過ごした時間が「あたたかい思い出」として残っているようです。父親としたキャッチボール、母親と作った料理の光景など、皆さん具体的に話してくれます。
一方、「悲しい思い出」として多かったのは、「不和、けんか」でした。両親の夫婦げんか、嫁姑関係、親族との不和などです。また親との関係や兄弟との関係にずっと苦しんできた、という方も少なくありません。もちろん、さしつかえない範囲で話してもらいますし、あまりに思い出すのにつらい出来事を無理に話してもらうこともありません。しかし、相手が受けてきた悲しみを知り、受け止め、寄り添おうとするカップルの姿に、私たち夫婦は多くのことを教えられてきました。まさに「喜ぶ者といっしょに喜び、泣く者といっしょに泣く」という聖書のことばを思わされるのです。
この結婚の学びでは、私たち夫婦も質問に答え、分かち合います。夫の「家族のあたたかい思い出」の一つは、「父親とのプロレスごっこ」です。「日曜日の朝には必ず父の布団に飛び込んで、プロレス技をくり出したなあ」と、目を細めて話します。そういえば、夫は息子とよくレスリングや相撲ごっこをしているわけです!
また、家族旅行の様子も鮮明に話してくれます。「教師一家だったから、行き先は登呂遺跡とか万博とか、社会科見学みたいな旅行やったなあ」「すっごい古い旅館やったんやで」と話しながらも、うれしそうです。
私たち夫婦は、「子どもたちに財産は残せないけど、家族旅行の思い出や人との出会いを財産として残してあげたいね」と、学びを通してよく話すようになりました。
私の「家族のあたたかい思い出」と言えば、家族みんなで行ったスキー旅行や教会のキャンプ、母と夜中に熱いお茶を飲んだことなどです。ささいなことでも、家族と過ごした時間は今でもくっきりと思い出されます。一方、「悲しい思い出」についても、夫婦で話し合ってきました。お互い話すのに十年以上かかった出来事もありましたが、助け手として寄り添い、相手のために祈ることを教えられてきました(この「助け手として寄り添うこと」については、別項でとりあげたいと思います)。
最後に、「家族が大切にしてきたことは何ですか?」という質問について。この答えは、皆さん千差万別です。
夫の実家では、「挨拶をする」「祖父母を大切にする」「誕生日などのイベントは家族で過ごす」だったそうです。私の実家では「食事、健康、栄養」「読書」「祈り合うこと」だったように思います。
私の家族はおいしいものに目がなく、特に麺類が大好き。夕食後なのに、ダイニングで家族で話し込んでいると、母がそうめんやうどんを茹でだして夜食に食べるという謎の習慣がありました。「太っちゃう!」と言いながら家族で麺をすする……ああ、これもあたたかい思い出の一つなのでした。