わが家の小さな食卓から
愛し合う二人のための結婚講座
第4回 あなたの自由な姿とは?

大嶋裕香
 1973年東京生まれ。宣教団体でキリスト教雑誌の編集、校正を手がける。99年にキリスト者学生会(KGK)主事の夫と結婚後、浦和、神戸、金沢と転々としながら年間100~200名近い学生、卒業生を自宅に迎える。KGKを中心に、夫と共に結婚セミナーで奉仕。その傍ら、自宅でパン教室、料理教室を開き、子どもたちにパン作りを教えている。13歳の娘と10歳の息子の母親。

わが家の食卓で結婚前のカップルと行っている学びの二回目、または三回目で必ずする質問があります。
「あなたの自由な姿はなんですか?」
「相手の自由な姿はなんでしょうか?」
私はこの答えをとても楽しみにしています。ある意味で、私たちがしている結婚の学びのクライマックスと言ってもいい質問だと思います。
実は、この質問にすぐに答えられる人はまれです。皆さん「うーん」とうなったり、目を閉じて黙想したり。ですから、「あなたの本来の姿は? あなたが一番あなたらしくあれることは?」「天国に行ってからしていることはなんですか?」と別の角度からも質問します。すると、「ああ、わかりました」と答えが出ることが多いのです。
男性の答えの中で面白かったのは、「計画を立てる」というものでした。「ぼくの自由な姿は物事の計画を立てることですね。それが実行されなくてもいいのです。計画を立てている時に喜びを感じます」と言って、結婚式のスケジュールを分刻みに記した紙を見せてくれました。「確かに!」とその場にいた全員が納得しました。
女性では、「笑う」「泣く」「歌う、賛美する」「だれかとともにいること」といった答えがありました。いつもにこにこして笑顔が印象的な女性が、「私の自由な姿は泣くことです」と言われました。その答えが意外だったので、「笑うことではないの?」と聞くと、「いつも笑っているねって言われるのですが、それは作った自分です。幼い頃からだれかに合わせて無理して笑っています。私が本当に自由になれるのは、泣く時なんです」との答え。相手の方も「そうそう」とうなずいておられました。表面的には決してわからない人格に触れたひと時でした。

     *

私たち夫婦がこの質問をするようになったのは、数年前に参加した結婚セミナーがきっかけです。
講師は、唄野隆先生、絢子先生ご夫妻。お二人がハンス・ビュルキ先生、アゴ先生ご夫妻の夫婦セミナーに参加された時に一つの質問を受けたそうです。それは「結婚した夫婦にとって一番大事なものはなんですか?」。参加者は「愛」や「信頼」と答えましたが、「ノー」と言われ、「一番大事なものは自由です」との答えだったそうです。
「夫婦の間で、一番大切なのは自由」
その言葉を聞いて、思わずうなってしまいました。確かに人間の愛や信頼は不完全で、相手を束縛することもあります。「主の御霊のあるところには自由があります」(Ⅱコリント3・17)、「真理はあなたがたを自由にします」(ヨハネ8・32)という聖書のことばを思い出しました。
本当の夫婦関係とは自分が自由であること、相手を自由にすること。―なんて深い世界なのでしょう!
その後、唄野先生の結婚セミナーの中で、互いの自由な姿を考える時が与えられました。私たち夫婦も考えてみました。まず自分のことを考えると、「私の自由な姿は祈ることだ」とすぐに答えが浮かびました。「一人で祈ること、だれかとともに祈ること、それが最上の喜びだ」と。
次に夫のことを考えると、真っ先に温泉に入っている姿が思い浮かびました。「ねえ、あなたの自由な姿は温泉に入っていることかなあ?」と小声で聞くと、「それは俺が好きなことやろ!」とすかさずつっこみが入りました。
「そうじゃなくて、本来の姿を考えるんだよ」
すると、目を閉じて眉間に皺を寄せている顔が浮かんだのです。「そうだ! 彼の本来の自由な姿は考えることだ!」
互いの答えを分かち合う時になり、「あなたの自由な姿は、考えることだと思う」と話すと、夫がはっとした顔になりました。「実は、自分の自由な姿がわからなかったんだ。でも裕香のことばを聞いて、その通りだと思った。自分は小さい頃、いじめられっ子で、よく下校中に違う世界にいる自分を空想していたことを思い出したよ。その小さかった自分の姿と、今、説教者として説教を考え、聖書のことばを思い巡らす自分の姿がつながっていることがわかった。うれしかったよ、ありがとう」
夫婦の距離がぐんと縮まった気がしました。
その後、夫は私の自由な姿について、「祈ることだよね」と話してくれました。「あと、笑うことじゃないかな? 喜んでいることが裕香の自由な姿だと思う」。それは私のたましいに触れ、まさに自由と解放、喜びを与える言葉でした。互いの自由な姿を知り、神に造られた本来の姿になれるよう手助けすること―夫婦の自由な関係とはなんと素晴らしいのでしょうか。

唄野先生夫妻の著書
『夫婦の成熟を求めて』

A5判 1,400 円+税
いのちのことば社