わが家の小さな食卓から
愛し合う二人のための結婚講座
第8回 夫婦げんかに名前をつける

大嶋裕香
 1973年東京生まれ。宣教団体でキリスト教雑誌の編集、校正を手がける。99年にキリスト者学生会(KGK)主事の夫と結婚後、浦和、神戸、金沢と転々としながら年間100~200名近い学生、卒業生を自宅に迎える。KGKを中心に、夫と共に結婚セミナーで奉仕。その傍ら、自宅でパン教室、料理教室を開き、子どもたちにパン作りを教えている。13歳の娘と10歳の息子の母親。

わが家の食卓で結婚前のカップルとしている学びは、結婚前に二回か三回、結婚後一回を目安にしています。その後できれば毎年、または数年に一度はわが家に来ていただき、学びを続けていくことをお勧めしています。
結婚後初めての学びでは、夫婦げんかに名前をつけてもらいます。以前、十数組が集った結婚セミナーにおいて、「夫婦げんかに名前をつけて、報告する」という課題をしてもらったら、非常に盛り上がったのです。
最初は「えーっ、そんなことするんですか? 恥ずかしいなあ」と顔を見合わせていた夫婦も、一人が話し始めたら、次々と出るわ出るわ……。「夫の駐車場立てこもり事件」やら「妻の公園逃亡事件」やら、かなり激しいけんかの名前が発表されました。夫婦げんかの報告なので、さぞや険悪な雰囲気になるかと思いきや、これが不思議と笑いが起こり、一体感が醸し出されていくのです。「こんなに激しくけんかしているのは、うちだけかも」「うちの奥さんは怒ると怖いなあ」と思っていたのに、「なんだ、ほかの家も結構派手にやっているのね」と慰められるそうです。
このテーマは、第三者がいる前で話し合うのがポイントです。夫婦で話し合っても、どうしても煮詰まってしまう問題もあります。しかし、信頼できる先輩カップルに間に入ってもらうと、自分たちを客観的に見つめ直し、けんかさえ笑いに変えられる恵みを体験できるのです。
こうして、わが家の結婚の学びにも「夫婦げんかに名前をつける」を取り入れることにしました。まだまだ新婚のカップルが多く、結婚セミナーで聞いた怨念のこもったような激しいけんかはあまり報告されません。ある新婚四か月のカップルのけんかの名前は「目覚まし時計事件」でした。目覚まし時計の音に気づかず寝続ける妻。やっと目覚めたと思ったら、夫の体越しに手を伸ばしてスイッチを止めようとし、夫にタックルを繰り返す。その寝ぼけた姿に夫が怒り出したそうです。想像して思わず笑ってしまいました。

もちろん、夫婦げんかの名前を報告して学びは終わりではありません。「どういうときに自分たち夫婦はけんかになりやすいか」を思い起こしてもらいます。また、「どうやって仲直りしているか」も話してもらいます。
私たち夫婦もけんかの名前やけんかのきっかけ、仲直りの方法について話します。私たちのけんかのきっかけは、どちらかの体調が悪いとき、忙しくて疲れているとき、おなかがすいているときが三大要因です。ちょっとした相手の言葉遣いや態度にかちんときて、けんかが始まることがなんと多いことか。きっかけは実に些細なことです。それが、意地の張り合いになり、果ては憎しみ合いになり、修復不可能な夫婦関係になることもあります。たかがけんか、されどけんか。けんかの芽は小さなうちに摘み取ることが大事です。きっかけのパターンを覚えておくと、けんかを回避できることもあるのです。「今おなかがすいているから、いらいらしているんだ。何か食べよう」とか「今日は疲れているから、ちょっと休んでこよう」など、感情のコントロールに努めることができます。それでもどうしても感情が爆発し、けんかになってしまうことはあります。そんなときは「仲直りの方法」を確立しておくと助かります。わが家ではけんかは次の日に持ち越しません。その日のうちに「ごめんなさい」を言うようにしています。そしてけんかのあとは、場所を変えます。最近は二人で近所の喫茶店に行くパターンを確立しました。けんかした場所から離れ、おいしいコーヒーを飲んで心を落ち着かせます。人の目があるので、けんかが再発することもありません。そして大きなスイーツを注文し、二人で分け合って仲直りとなります。
実は先月の原稿の締め切り日前に、久々にかなり大きな夫婦げんかをしたところ、原稿が書けなくなってしまいました。「結婚」の連載や結婚セミナーの講師をしながら夫婦仲が悪かったら恥ずかしい限りなのですが、締め切り日直前にめでたく仲直りし、原稿を書き上げることができました。
私たちがけんかしても仲直りできるのは、主がいてくださるからです。みことばによって自分の非を認め、互いに赦し合うことができるのは主のあわれみです。夫婦の間に和解の主がいてくださるとは、なんと幸いなことでしょう。