クリスマスには本を贈ろう 心から心へ思いを託して本のプレゼント

中山信児
日本福音キリスト教会連合 菅生キリスト教会牧師

心の本棚

 プレゼントを選ぶときには、まず贈る相手のことを考えることから始めます。その人の表情や仕草をあれこれ、何が好きで今どうしているか、等々。そうこうしているうちに、伝えたい思いや贈りたいものが、だんだんとかたちになって心に浮かんできます。この段階で、本以外になることもありますが、本好きな私は、だいたい本を思い浮かべます。あとは、自分の「心の本棚」から、伝えたい思いを託すのにふさわしいしい本を選ぶだけです。

 「心の本棚」は、今まで読んだ本の記憶です。いろいろな本を読んでいると、一度読んだらおしまいという本もありますが、何度も読み返したい本や、他の人にも紹介したい本があります。そんな本は、書斎の本棚でも取り出しやすい所に並べられますが、心の本棚でも特別な場所に並べられます。本をプレゼントするときには、そこに並んでいる本たちを思いめぐらしながら選ぶのです。

本を贈る

 いままで、この本棚から選んでプレゼントした本を何冊かご紹介しましょう。

 『ちいさなリース』(さかもとふぁみ著、いのちのことば社)は、「あなたの敵を愛しなさい」というみことばに導かれた少女の絵本です。実話をもとにしたストーリーも素敵ですが、登場人物の表情が実によく描けているのです。リースを持ってたたずむ少女の涙顔、少女にキスされた将軍のびっくり顔と安らかな寝顔。ひとつひとつの表情が生きていて、見る者の心に深い余韻を残します。

 『ステップアップ』(本郷台キリスト教会、CS成長センター)は、コミック仕立ての新しいタイプの信仰入門書です。小学校の高学年ぐらいなら十分読めるので、子どもの信仰の励ましのためにとても有益です。子どもだけでなく、大人の求道者の導きや、大人のクリスチャンがもう一度初心に返って信仰の恵みを確認するためにも良い本です。

 『わたしたちと世界―人を知り国を知る』(武田清子、岩波ジュニア新書)は、高名なクリスチャン学者である著者が、若い世代に向けて書いた本です。第二次大戦で良心的兵役拒否を貫いたクェーカー教徒たち。日本のクリスチャンたちが知っておかなければならない韓国の堤岩教会事件を報じた柏木義円牧師。アイヌを愛し、福音を伝えつつアイヌ語研究の門戸を開いた宣教師バチェラーなど、地の塩、世の光として生きた人たちが取り上げられています。クリスチャンとして、また日本人として、ぜひ一度は読んでおきたい本です。

 この三冊をご覧になって「大人向けの本がない」と感じるかもしれませんが、どれも大人の私が深く心動かされたものばかりです。「本当に良い本には対象年齢はない」というのが私の持論です。子どもの心に語りかけることのできる本は、大人の心にも語りかけます。時に、大人が心にまとっている固い殻をとかして、心を柔らかくしてくれることさえあります。大人の人に絵本や児童文学を贈るのは恥ずかしいことではありません。プレゼントする本に迷ったら、ぜひ「子ども向け」の本のことも考えてみてください。

聖書を贈る

 本を贈ろうとするとき忘れてはいけないのが聖書です。私も、いろいろなサイズ、いろいろなタイプの『新改訳聖書』を、相手や場合や予算に応じて贈ることがあります。相手がクリスチャンなら、当然、聖書はすでに持っているでしょう。でも、家庭礼拝用に大型聖書、書き込み用の聖書、旅行用のコンパクトサイズなど、もう一冊の聖書のプレゼントは意外と役に立ち、喜ばれるものです。ずいぶん前になりますが、友人の結婚式で引き出物としていただいたポケットサイズ(B7判)の『新約聖書(詩篇・箴言付)』は、今でもちょっと出かけるときなどにとても重宝しています。

 他に、聖書関係でよくプレゼントする本を何冊かご紹介しましょう。

 みことばをより深く味わいたいと願っている人や教会学校の先生には『エッセンシャル聖書辞典』や『エッセンシャル聖書コンコーダンス』(いのちのことば社)が良い助けになります。

 『まんが聖書物語(合本)』(樋口雅一、山口昇、いのちのことば社)は、聖書全体を一冊で見ることができる嬉しいマンガです。しっかりした監修がされているので内容も安心です。わが家の子どもたちはこの本で、聖書の主なエピソードをほとんど覚えました。

 出産のお祝いには『絵でみるこどもとおとなのはじめての聖書(新約編、旧約篇)』(L・ガリ他、至光社)をよくプレゼントします。はっきりした輪郭と鮮やかな色づかいの絵に、みじかくて分かりやすい文章が添えられた良質の絵本です。

 最後に英語の本です。『Tomie dePaola’s BOOK OF BIBLE STORIES』(Zondervan)は、『神の道化師』(ほるぷ出版)で有名な絵本作家トミー・デパオラの聖書物語です。旧約と新約から合わせて三十七のお話が選ばれていますが、本文に英語の聖書(NIV)が使われているのが特徴です。

 「聖書を読むのはちょっと」という方でも、読みやすいマンガやきれいな絵本なら喜んでいただくことができます。

祈って贈る

 いろいろなプレゼントがありますが、本はいつまでも残って、何度も読み返すことができます。プレゼントに添えたメッセージカードは捨てられるかもしれませんが、本そのものが伝えたいメッセージです。だから、私は祈りながら本を選び、大切なメッセージが相手に届くように祈りながらプレゼントするのです。