ティンデル聖書注解大解剖 [推薦文]コンパクトで信頼のおける注解書
伊藤明生
東京基督教大学 学部長(新約学専攻)
大学生時代のことでありますから、かれこれ二十年以上も前のことです。教会の青年会で、聖書研究をすることになり、CLCブックス御茶ノ水に適当な注解書がないかと探しに行ったところ、洋書部の店員が紹介してくださったのがティンデル聖書注解でした。
その際、 聖書研究に取り上げたのはテモテへの手紙第一(確か!)で、お世話になったのはドナルド・ガスリーの牧会書簡の注解でした。以来、神学生時代、留学時代、神学校の教師になってからも、時に応じて私の必要に応えてくれたのが、ティンデル聖書注解でした。留学時代は、マタイの福音書で論文を書いたので、ディック・フランスのマタイの注解には、たいへんお世話になりました。
「ティンデル」とは、英国の宗教改革者であり、聖書翻訳事業に貢献したウィリアム・ティンデールに由来します。第二次世界大戦直前、福音派を学的に高めることを目的に、英国ケンブリッジにティンデール・ハウスという聖書学研究所を設立しました。そこを拠点とした研究会をティンデール・フェローシップと名付け、英国の福音派の聖書学者を核として、福音派のニーズに応えるべく企画され、執筆されてきた注解書が本シリーズです。
聖書注解が徐々に分厚いものになり、詳しければ詳しいほど良い注解であるかと誤解されがちな(ひとつにはパソコンの普及が大きな要因のひとつでもありましょう)今日でありますが、このシリーズは、何よりもコンパクトで、信頼が置ける注解書であります。
細かい語、語句の詳細な説明ではなく、段落ごと、節ごとの的確な説明が期待できるのが、ティンデルの聖書注解であります。
私自身は、あまり精通していない書の内容を知る助けとしてもっぱら愛用しています。新約聖書でも詳細に学んだことのない書、あるいは旧約聖書の中の書を学ぶ助けとし活用しています。
このような注解書が邦訳され、出版され、広く日本の福音派の方々の手に届くことは素晴らしいことであります。さらに、日本の福音派が、聖書理解・解釈においてもさらに成長する一助となることを信じています。