バック・トゥ・ベーシック・シリーズ(3) 交わり 人はその友によってとがれる

交わり
福田 充男
RACネットワーク 代表

 一、神と二人だけで幸せ?

 先日、あるクリスチャンの友人が次のように言いました。「私は密室で神ご自身とお交わりするのが楽しいので、人間と話すのがいやになってきました」このような考え方の背後には、個人主義的な神学が見え隠れしています。

 つまり、「神はすべての必要を満たされる方なので、クリスチャンは本質的に他者を必要としない」という神学的仮定です。確かに、「神はすべての必要を満たされる」ことは正しいのですが、必要の多くは神の家族とされた者が互いに仕えあうことで与えられます。

 教会は「キリストのからだ」です。身体の各部分が相互に支え合っているように、私たちも誰かを支え、誰かに支えられる関係の網の中に存在しています。クリスチャンは、ひとりでは成長することができないし、ひとりでは神の召しに応えて働きを進めていくこともできません。

 「キリストによって、からだ全体は、一つ一つの部分がその力量にふさわしく働く力により、また、備えられたあらゆる結び目によって、しっかりと組み合わされ、結び合わされ、成長して、愛のうちに建てられるのです」(エペソ4:16)。

 節々が補い合い、組み合わされ、分に応じて働くことにより、からだ全体が成長して建て上げられていきます。互いに愛し、互いに祈り、互いに教え、互いに仕えることで、それぞれに与えられた個別の機能を果たすことができるのです。

 二、三つの方向転換

 クリスチャンは成長していく過程の中で、三度方向転換を経験すると考えられます。一つは、神に対して垂直に方向転換します。自分勝手な道を歩んでいた人が、イエス様を通して語られる神の呼びかけに応え、自分を捨てて神に従っていこうと決心します。

 第二の方向転換は、「互いに」という水平の方向に転換します。心の部屋に閉じこもり、自分さえよければよいと思っていた人が、ご自身の生命を投げ出されたイエス様の生き方に倣うようになります。隣人の人格的成長とビジョンの実現を願って、自分を愛するように隣人を愛するようになるのです。

 第三の方向転換は、「世」に対する方向転換です。神から愛とあわれみと力をいただいている共同体の「しもべ」としての存在と奉仕が、「世」に対する「神の国」の徴となります。

 方向転換の度合いが進んでいるほど、隣人と時を過ごすことを喜ぶようになります。密室の祈りが重要なのは、隣人を愛するために必要な「自分を神に明け渡す力」が与えられるからです。

 三、互いに罪を告白し合う関係

 ヤコブの手紙の中には、「互いに罪を言い表わし、互いのために祈りなさい。いやされるためです」(5:16)と記されています。単に「罪を言い表わす方がいいよ」というのではなく、「罪を言い表わしなさい」と命令形で書かれています。

 罪を告白し合うことは、互いに支え合う関係の具体的な表現です。これは罰ではなく神からの祝福です。なぜなら、罪を告白した後に互いに祈り合うことを通していやされるからです。

 それは、神のみ前にへりくだり「私は神の恵みと赦しがなければ生きていけないものです」という「赦された罪人の現実」を表明する機会です。それと同時に、自分のありのままの姿を知った上で、自分の成長のために祈ってくれる友人が与えられているという恵みを味わう時間でもあるのです。

 私は毎週、秘密を守ってくれる身近な友人と、罪を告白し合う交わりを続けています。犯した罪を友人の前で告白することは恥ずかしいことです。しかし、そのことにより「罪を恥じる」という健全な感覚を保ち続けることができます。告白することで偽善者であり続けることができなくなります。

 愛し合う関係を通して、罪を犯したことによって受けた傷のいやしと、隠れた罪の力に立ち向かう勇気が与えられます。そして、神のみ前にへりくだる者を神がどのように引き上げてくださるのかを、互いの生活の変化を見て喜び合うようになるのです。

 四、それでは始めましょう!

 それでは、互いの「信仰の戦い」に参戦するためにはどうすればよいでしょう。日曜礼拝を人為的な告白大会にしないでください。告白を聞く者には、その秘密を守り、告白した人のいやしと成長とビジョンの実現のために祈る責任が伴います。

 「礼拝のサイズでは大きすぎるので二、三人のグループに分けよう」という上意下達の考えも危険です。まず、「本当に私は変えられたいのか」と自問してください。その上で、「何が何でも真理がほしい人に出会わせてください」と祈ってください。

 箴言27:17には、「鉄は鉄によってとがれ、人はその友によってとがれる」と記されています。もし、パートナーが見つかったら、「友によってとがれる」という目的をはっきりさせるために、共通の質問表を定め、それを元に定期的に相互に罪を言い表わすようにしましょう。

 質問表の具体例は次のホームページの「LTG(育て合う関係作り)」のコーナーに掲載されています。
http://homepage3.nifty.com/rac/ractop2.html