ビデオ 試写室◆ ビデオ評 110 3本しかない人生から、
3本もある人生へ
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師
田原米子さんを教会にお迎えしたとき、チラシを見た40人くらいの中学生が集まりました。そして、その講演に感動し、半分くらいが教会学校に来始めました。一度この人と会うと、一度この人の話を聞くと、たくさんの人の価値観が変わります。
でも、残念ながら米子さんは、2005年に主のもとに召されました。しかし、今も彼女の証しが聴けるように、また彼女に会えるようにしてくれたライフ企画に感謝します。映像と一緒に講演が聴けるDVDができました。生の講演を聴いたときに劣らぬ感動で、世界が違って見えてきます。
「おかあさん。命のありったけ愛してくれて、そして、死んでいってしまうもの……」(再現ドラマより)
多くの心を病む人の発病のきっかけは、親しい家族の死です。心の支えだった人を失うということは、想像以上に悲惨なことです。米子さんは、一番多感な思春期にお母さんを亡くし、お母さんのいない家に帰るのがつらくて、学校が終わっても、映画に行ったり、友達と遊んだり、演劇に夢中になっていました。でも、心にぽっかり空いた穴は、埋められません。担任の先生に、「人間として生きることの幸せは、どこにあるですか?」と聞きますが、先生は答えられません。空洞ができたままの心で生きるのが苦しくて、ついに列車に飛び込みました。
気がついてみると、両足と左腕が切断され、残った右手も指は3本しかありません! 絶望した米子さんは、毎日睡眠剤を浴衣のたもとに貯め、致死量に達したら死のうと思っていました。そんなある日、見ず知らずの青年と外人が訪ねて来ました。外人は宣教師、その通訳をしていた青年は、後の夫になる田原昭肥さんでした。
何度も拒まれながら、二人が訪問を続けたある日、ついに米子さんが祈りました。「神さま、助けてください!」たったそれだけの祈りが、彼女を変えました。次の朝、何度も見ては泣いていた自分の手を見て、「あらっ?!」と叫びます。「3本もある!」
心が変わると、何もかもが変わります。「あっ、編み物ができる!」「あっ、字が書ける!」あとはうれしい発見の連続でした。そして結婚。やがて、何十万人という人に感動を与え、希望を与える、かけがえのない生涯が創造されていきました。
年間の自殺者が35000人に届こうかというこの時代。死ぬことを考えている人が、米子さんに触れて、すばらしい生涯を生きてほしいと願ってやみません。再現ドラマは、映画『生きるとは~米子~』を編集し、夫である田原昭肥牧師のメッセージを加えたものです。
観終わってから、何かが始まります。