ビデオ 試写室◆ ビデオ評 35 『実録・親分はイエス様[詳細篇:吉田芳幸/真島創一]』
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師
怖いほどの実感が!まさに放蕩息子の帰還
私は、1974年から77年まで、神戸改革派神学校で勉強していました。全寮制ですからそこに住んでいました。入学すると、先輩がその近くの店とか、有名な所とか、役に立ちそうな所を案内してくれました。その一つが、日本最大の暴力組織と言われる山口組の田岡組長の家。「ここはよく覚えておけよ」と言われました。塀が高くて中は見えません。けれども、いつも回りを警官が見張っていて、そばを歩くのもスリル満点。新入生が入ると必ずそこに案内しました。そこがどんなに恐ろしい所か、知らなかったのです。
このビデオを見て、体が震えました。ちょうどそのころ、そこで歴史に残るような事件が起ころうとしていたとは!
「1975年、大阪中を震撼させた、いわゆる大阪戦争と呼ばれる抗争事件が勃発した」というナレーションを聴いて、ちょうど私がすぐそばにいた頃、血で血を洗う抗争が起こっていて、まもなくそれが田岡組長狙撃事件に発展する、自分のすぐ近所でそんなことが起こりつつあったことを、今知ったのです。
それ以上に、その中心人物が、25年後、教会の長老さんになっていて、ライフ企画から証しのビデオを出し、私がその紹介を書くとは、今こそもっとすごいことが起こっています。
大阪戦争のことを淡々と語る吉田芳幸さんの声は、静かなだけにものすごい迫力で、「その頃、ウチの組は……」と言うのを聴いていて、「ああ、本当に組の人だったんだなあ」という実感がわいてきました。
事件に関する新聞記事やさまざまなイメージカット映像、そしてご本人の回想と、音楽にナレーション。正直言って怖くなりました。それだけに、そのあとの奥さんの証言と回心の証し、「父と私は、今最高の関係です」と語る、牧師である息子さんの顔が、感動でした。
真島創一さんは、ヤクザ生活から、借金と覚せい剤の苦悩を通して、クリスチャンである父のもとに帰り、回心しました。まさに「放蕩息子のたとえ」は、昔の話ではないのですね。
将来宣教師を目指して準備しておられるとのこと、親分イエス様の下で、すさまじいほどの働きをされることを、予感します。
映画『親分はイエス様』では描ききれなかった、8人のバラバたちの回心のドキュメンタリー。クリスチャンでない人が見ても、惹きつけられるでしょう。