ビデオ 試写室◆ ビデオ評 37 『実録・親分はイエス様』
[詳細篇:中島哲夫/信田和富]
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師
もう一度生まれて、やり直そう!
「人間も、ああなっちゃったら、おしまいだねえ」。私は、小さいときから今までに、この言葉を何回耳にしてきたかわかりません。体に障害を持ったときに私自身も言われたし、自分も言ったことがあると思います。これほど残酷な言葉もないでしょう。でも、そうではないことを、今回のビデオがまた証明してくれました。中島哲夫さんは、クラブで知り合った韓国人女性ソンエさんと、ヤクザであることを隠して交際し、1年後に結婚を申し込みました。ところがその1年の間に、彼女はクリスチャンになっていたのです。結婚の条件は、一緒に教会に行くこと。中島さんは教会でも自分の正体を隠していました。そのころ、ソンエさんは中島さんの正体を知り、彼が5つのもの(酒、たばこ、女、クスリ、ヤクザ)をやめるように毎日祈り始めます。
ある時、中島さんは覚せい剤中毒で錯乱状態になり、ある人物を殺しに行きますが、友人に羽交い締めにされて祈祷院へ連れて行かれます。そこで聖霊によって、自分のすべての罪と向き合わされ、泣いて悔い改めたのです。
『親分はイエス様』の試写会の時、彼は元の仲間(現役の暴力団員たち)を招待したそうです。彼らの感想の中に、「ほんとうにうらやましい」という言葉がありました。中島さんは、彼らの救いのために毎日祈っています。
信田和富さんは、すし屋の店員からヤクザになり、18歳で賭場荒らしをして少年刑務所に入ります。3年半の刑務所生活の後、罪悪感に耐えきれなくなって、所内の「キリスト教教誨」に行って牧師の話を聞きました。十字架上の強盗へのイエスの言葉を聞いた夜、彼は布団の中で祈りました。しかし成人刑務所に移ると、人を殴って懲罰房へ。その中で、すぐそばに立っておられるイエス様に気づきました。それから聖書を暗唱し、「愛だよ、愛だよ!」と言って皆に伝道。
出所してまたもとの仲間の所に戻りますが、葛藤の末、30歳の直前でヤクザをやめることができました。「やめてなにをするんだ?」と聞く仲間に、信田さんは「牧師になりたいんです」と答えました。
映し出される以前の顔と、涙をためて語る今の顔を見て、「魂が砕かれるとは、こういうことなんだ」と思いました。
ヤクザだけでなく、重い病気や障害を負って、「こうなったら終わりだ」と思っている人も、前以上の人生を生きなおすことができることを、彼らの証しを通して信じていただきたいと思います。なにしろ、「もう一回生まれること」ができるんですから、やり直せないはずはありません。