ビデオ 試写室◆ ビデオ評 45 『WHO IS JESUS ?』
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師
イエス・キリストの偉大な生涯が27分に凝縮
イエス・キリストの生涯を描いた映画は数多くありますが、時間が長すぎてなかなか見られないことと、断片的で全体の流れをつかめないという欠点があります。この作品は、たった27分で、誕生・洗礼・山上の説教・病人の癒し・ペテロの信仰告白・十字架と復活の予告・エルサレム入城・宮清め・偽善者の糾弾・エルサレムへの嘆き・最後の晩餐・ユダの裏切り・十字架・復活という生涯の全体を凝縮しています。けれどもひとつひとつの場面が希薄ではなく、イエス様の感情が激しく表現されています。その表情のいくつかを、紹介してみましょう。
- いつもニコニコ笑っています。笑顔の人というのは、心が和み、安心します。でも、聖画などでは、笑顔のイエス様を見ることはまずありません。本当はよく笑う、ユーモアに富んだ方だったと、最近の学者は言っています。
- 「病人」を見つめるときの、「病人」の悲しみをすべて共有するような悲しい表情。そして、癒されたときに、一緒に転げまわって喜ぶイエス様。その大きな笑い声も印象的です。
- 神殿で商売をする者たちを追い出した後に見せる激しい怒り。これはご自分の死を覚悟した必死の抗議でした。
- 何よりも印象に残るのは、最後の晩餐のときです。「わたしを裏切る者がここにいる」と言って、みんなが戸惑っているとき、「人の子を裏切るような者は、……生まれない方が良かったのです」と言うと、ユダが「まさか私ではないでしょう」と言います。そのときイエス様は、たまらずユダを抱きしめて、「いや、それはあなただ」と泣きながら答えます。ユダへの愛があふれています。しかしその手を振り払って、ユダは出て行きます。
- 復活のイエス様は、それまでにもまさる最高の笑顔です。そして、見ているあなたの方を見て、指で「来なさい」と招いています。
最後に、イエスを演じたブルース・マルチアーノが登場します。十字架のシーンを撮るのに12時間もかかり、そのうち9時間も十字架についていたそうです。ローマ兵役の俳優が、「神の子ならそこから降りてみろ」と言ったとき、「イエス様は、ここから降りることもできたんだなあ」と思ったそうです。「なぜ降りなかったんだろう?」その答えは、子どもの頃から聞いていたけれど、はじめてそれがどんなにすごいことだったかわかったといいます。「あなたを愛しているから、降りなかったのです。最後まで苦しんで、死ぬことを選ばれたのです」という主演者によるメッセージで終わっています。そして、イエス様を心に受け入れる祈りも、彼が導いています。このビデオ1本で伝道もできます。
ある牧師が言いました。「クリスチャンは、喜びと楽しみだけで生きるわけではない。喜怒哀楽、全部が必要なんだ。」この作品は、イエス様の喜怒哀楽を、本当によく表現しています。