ビデオ 試写室◆ ビデオ評 63 「映画史上もっとも有名な映画」
新価格、新パッケージで登場
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師
これは、画期的な作品です。『十戒』というと、誰でも、あのチャールトン・ヘストン主演の映画を思い出すでしょう。このたび、1998年にライフ・エンターテイメントから発売された「モーセ」がパッケージをリニューアル、そしてさらにお求めやすい価格になって1月にニューリリースされることになりました。「映画史上最も有名な映画」「スペクタクルの原点」と言われる『十戒』のリメイク版です。
主演が、何とベン・キングズレーです。映画の好きな方なら、この名前を聞くと『ガンジー』を思い出すでしょう。もともと舞台俳優であったキングズレーは、72年頃からテレビ、映画に出るようになり、82年の『ガンジー』で主要映画賞の主演賞を独占して、一躍有名になりました。この「モーセ」ではヘストンのモーセとはまったくちがった、気の弱い、訥弁の、指導者タイプからは程遠い男が、神の力によって自分の使命を猛然と果たしていく姿を好演しています。
モーセを悩ます二人のパロ(エジプト王)。王女に拾われて育ったモーセを、実子のメルネフタと差別し、笑いものにするパロ・ラメセスにクリストファー・リー。父を継ぎ、モーセと対決することになる冷血漢パロ・メルネフタには、フランク・ランジェラ。この二人は、どちらも『吸血鬼ドラキュラ』を演じている、不気味な雰囲気を持つ俳優です。パロ親子にはぴったりです。
モーセを拾い育てた王女プティラのアンナ・ガリエナにも、ご注目ください。大きな一つの魅力は、音楽です。エンニオ・モリコーネは、400以上もの名画を手がけた巨匠です。『めぐり逢い』『ディスクロージャー』『死刑台のメロディ』、古くは『夕日のガンマン』など、あらゆるジャンルをこなしています。この作品でも、ときには美しく、ときにはロマンチックに、ときには壮大に、幅広い様々な音楽を駆使して、感動を高めています。
監督が、オードリー・ヘップバーンの『おしゃれ泥棒』というコメディや『マンハッタン・ミステリー/消えた黒い箱』というサスペンスまで、多くのジャンルを手がけたロジャー・ヤング。こういった実に贅沢なスタッフ・キャストで、この3時間の大河ドラマが仕上げられているのです。(つづく)