ビデオ 試写室◆ ビデオ評 70 『ミラクルメーカー』

『ミラクルメーカー  奇跡を起こした人 イエスの物語』
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師

ヤイロの娘の心に映ったイエス

『ミラクルメーカー  奇跡を起こした人』 1世紀のイスラエル。病気に侵された娘タマルは、会堂管理人の父ヤイロと一緒に来た街で、風変わりな若い大工に出会います。その大工の名前は、イエスでした。そこでタマルが見たのは、一人の娼婦。男たちに声をかけています。「汚れた女め!」鞭で娼婦を追い出そうとする男。そのとき、それを止めて、倒れた娼婦をやさしく起こす人がいます。仕事帰りのイエスでした。周りの人たちの冷たい視線を浴びながら、静かな笑顔で去るイエス。タマルの瞼に強烈に残ります。父のヤイロもイエスをにらんで、タマルを連れて帰ります。ヤイロは医者から、タマルの病気が治らないことを告知されたばかりでした。

 「お医者さん何だって?」「ああ、よく休むようにと」「あたしは大丈夫よ」

 タマルの口癖は、「大丈夫」。これは、親を安心させるためだけでなく、自分にも言っているのです。「大丈夫!」 肯定的で、思いやりのある、明るい女の子。このタマルはヤイロ家の光であり希望でした。そのタマルが不治の病とは!もう長くは生きられない命とは! 何と残酷なことでしょうか。

『ミラクルメーカー  奇跡を起こした人』 この映画は、イギリスのCartwn CymruとロシアのChrismas Filmsの合作です。このコンビはすでに多くの作品を発表し、エミー賞、オスカー賞など、数々の賞を受賞しています。この作品は、4年にわたる感動的な努力の賜物です。モスクワでは、6つのスタジオセットで250人のスタッフによって、ロシアの代表的なアニメ監督ストラニスラフ・ソコロフのもとで制作が進められました。同時に、イギリスの最も有能なアニメ画家たちがウェールズに集まり、かたずを呑むような見事な原画を描いていたのです。そして、あの「パッション」を作ったメル・ギブソンの会社Iconも協力しています。この作品には、3Dと2Dの両方が使われています。つまり、人形のアニメと絵のアニメです。物語は3Dで描かれ、回想シーンや、たとえ話に合わせて出てくる映像―などが、ディズニータッチの2Dで描かれるのです。

 さらに、これは「デジタルフィルム」という新しいフィルムで、空や水の動き、煙やちり、光などが、特殊効果で鮮やかに表現されます。

 病気の少女の心のフィルターを通して描かれたイエス・キリストの生涯。病気や苦難の中にある人に、特に大きな光になればと思います。