ビデオ 試写室◆ ビデオ評 73 『ミラクルメーカー』

『ミラクルメーカー  奇跡を起こした人 イエスの物語』
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師

(4)小さな奇跡 メイキング

『ミラクルメーカー』奇跡を起こした人 私もいろんな映画の「メイキング」を観ましたが、こんなに感動的なものがあったでしょうか? この作品の完成は、小さな奇跡です。ご存知のように、この映画は、ロシアチームによる「クレイアニメ(人形アニメ)」(現実シーン)と、イギリスチームによる「セルアニメ(絵のアニメ)」(回想シーン・たとえ話・心中の描写)を合体させ、さらにデジタル技術を駆使した、まったく新しいキリストの生涯です。

1.脚本(マレー・ワッツ)
「数ヶ月間研究をし、神学者の助言も受けました。ルカの福音書から、鍵となる人物を選びました。重い病気を患った少女。ヤイロの娘です。そこで考えました。子供の目から見た物語にしたらどうかと」。実にユニークな着想です。主役は病気の少女タマルです。

『ミラクルメーカー』奇跡を起こした人2.声の収録
まだ一枚の絵もないうちに、全篇の声の収録が行われました。選ばれた声優は、みな一流の俳優でした。英語版のイエス役は、Britain’s Royal National Theatre出身で「シンドラーのリスト」などに出演しているレイフ・ファインズです。

3.キャラクターのデザインとパペットの制作
 一人の顔のデザインに数ヶ月をかけて、高い芸術性にこだわって作られて行きました。人形(パペット)の精密さには驚きました。骨格から作り、ファーストフレックスという素材で体が仕上げられることによって、微妙な動きを表現することができています。

『ミラクルメーカー』奇跡を起こした人4.アニメ製作
 先に吹き込まれた音声に合わせて、アニメが作られます。ほとんどのアニメは、人物がしゃべるとき、口がただパクパク動いているだけですが、この作品では、声優の言葉に合わせて口の動きがつけられます。何十種類もの口が作られ、発音別に人形の口を付け替えているのです。一秒に何回も、口が交換され、眉毛や目、しわや涙、手足や衣装など、すべてが少しずつ動かされて、一コマ撮りされていきます。

 「90分の映画で、一人が一日に仕上げられる量は4秒以下です。1コマずつとるのは、気の遠くなる作業です。」(アニメ製作リーダー ナターシャ・ダビサ)1秒ごとに、長い苦しい労働が込められているのです。

『ミラクルメーカー』奇跡を起こした人 5年かかって完成。試写会のあと、キャスト、スタッフたちが抱き合い、口付けし、握手をし、涙を流しています。心が一つになった姿です。それが本編のラストシーンと重なりました。イエス様が昇天したとき、残された人たちは握手をし、夫婦は抱き合います。そこには平和がありました。地上に神の国が来たのです。どちらにも、イエス様と関わって、「隔ての壁」がなくなってしまった人たちの姿を見ました。