ビデオ 試写室◆ ビデオ評 74 はやくも「パッション」DVD、VHSに

DVD『パッション』
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師

 「十字架って、こういうものだったって、知らなかった……。ショックでした!」『パッション』の映画を見てきたという高校生が、涙をためながら言っていました。教会学校で、「イエス様は十字架にかかって、私たちの罪を背負ってくださいました」というお話は、何回も聞いていた。だけど、その「十字架」というのがピンと来なかった。当然でしょう。アクセサリーしか見たことがないんですから。それが、『パッション』を見たとき、こんなにすごいものだったことを知った。「イエス様はこんなに苦しんでくれたんだ」と、初めて実感した人は、他にも随分いるのではないでしょうか?

 私も教会学校に通っていました。十字架のお話を聞き、紙芝居を見ていました。でも、やっぱり十字架は実体がありませんでした。教会学校の先生たちの話し方が、上品で、やさしすぎて、(ちょっと言い過ぎですが)お高く止まっていたせいかもしれません。ところが、高校2年生のとき、『偉大な生涯の物語』で、初めて十字架を目で見ました。釘が手に打ち込まれるシーンで、団体で来ていたミッションスクールの女子高生たちが「キャー」と悲鳴を上げていました。そのとき、クリスチャンではなかった私の心に、「僕は何て罪深いんだろう」という思いが湧き上がってきたのです。キリストの十字架が自分の身代わりだったことさえも知らなかったのに、どうしてそう感じたのかわかりません。とにかく、お話では伝わらなかった十字架が、映画を通して心に伝わったのです。それから、また教会に行き始め、今度は十字架の話がだんだんとわかるようになりました。映画は、本では伝わらないものを伝えてくれます。

 それよりもはるかにリアルに、十分な時間をとって、十字架だけをクローズアップした映画は初めてです。『パッション』に沢山の人が集まったことは、日本に希望があることの印です。十字架に反応する人たちが沢山いるのです。その「反応」を「応答」に変えること。これが課題です。

 教会のお話だけでは伝わりにくい。映画館で見ただけでは、「映画」として観て、終わってしまう。それを、ただの「映画」としてではなく「メッセージ」として、教会で用いながら語っていくなら、目と耳の両方から福音が伝わっていくのではないでしょうか。今年100万人以上の人が示してくれた「反応」が、このVTR,DVDによって、「応答」にまで進むように、祈りたいと思います。