ビデオ 試写室◆ ビデオ評 81 DVD「ファイティング・テンプテーションズ」

「ファイティング・テンプテーションズ」
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師

ゴスペルの力!映画で実感!「ファイティング・テンプテーションズ」

 数年前、娘がもらした一言。「キリスト教関係で、もっとコメディーがあったらいいのにね」。それからずっと思っていました。「感動的な映画はあるけど、底抜けに笑えるコメディーはないな…。福音の本質は喜びなのだから、笑いで福音を伝える映画ができないかなあ」そんな私の願いが、かないました!

 去年の春は、『パッション』をご紹介しましたしたが、今年はコメディの『ファイティング・テンプテーションズ』。対照的ですがテーマは同じです。一方は涙で、一方は笑いで。

 この作品は、『天使にラブソングを』に似た展開ですが、もう少し深いメッセージがあるし、踊りはもっとすごいです。歌、ダンス、ストーリー、どれをとっても最高の123分です!

 監督は、『隣のヒットマン』、『エディ・マーフィーのホワイトハウス狂騒曲』など、コメディー一筋のジョナサン・リン。主演は、『ザ・エージェント』で助演男優賞を受賞し、ダンサーでもあるキューバ・グッディング・Jr.と、今や人気最高の歌手であり女優のビヨンセ・ノウルズ。ほかにも沢山のゴスペルシンガー、グループが出演しています。

 舞台は、ジョージア州モンテカルロのベウラ教会。始めから素晴らしいゴスペル礼拝のシーンです。しかし悲しいことに、仲間を裁く人がいるのです。マリアンは、「この世の歌手」になったことで、牧師の姉ポリーナに裁かれて、4歳の息子ダリンの手を引いて、街を出ていきます。息子のダリンは、父親をベトナム戦争で亡くし、やがて母親も交通事故で亡くします。

 大人になったダリンは、広告代理店の重役補佐になりましたが、学歴詐称で突然解雇され、路頭に迷います。さらに悪いことに、ただ一人の親せきだった母の叔母サリーの訃報を受け取り、故郷に帰ります。サリーの遺言には、「ダリンに遺産を譲る」と書いてありました。ただし条件があります。ベウラ教会の聖歌隊を指揮して、ゴスペル大会に出場させるということでした。

 ところが教会の聖歌隊員はたった6人、しかも歌になりません。その日からメンバー集め。

 その時、クラブで歌う女性歌手リリーに出会います。実は彼女も、教会で裁かれた人でした。そして聖歌隊に加わります。

 刑務所で囚人たちを感動させ、受刑者も加わり、まさに「罪びと」ばかりの聖歌隊。ポリーナは裁き続けますが、教会は活気づきます。聖歌隊の名前は、「ファイティング・テンプテーションズ」(誘惑と戦うこと)となりました。

 一緒に歌ううちに、みんなの心が変わっていきます。ゴスペル大会で歌う”He Still Loves Me”。「私は完璧どころか、間違いだらけ。力を尽くしてもうまくいかない。失敗すると世間は冷たい。私はそんなに善人じゃない。それでも神様は愛してくださる…」

 ラストシーンの礼拝には、笑顔で一緒に歌っているポリーナの姿が見えます。『賛美の力』という本のタイトルを思い出しました。私の心も洗われました。文句なしに素敵です!