ビデオ 試写室◆ ビデオ評 96 DVD「きみはきみらしく」(「たいせつなきみ」シリーズ3)
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師
“トレンド”の魔法に吸い取られる「パンチネロ」たち
『たいせつなきみ』の第3巻にあたるマックス・ルケードの作品です。第一巻の『たいせつなきみ』のテーマは「能力」、第二巻『ほんとうにたいせつなもの』のテーマは「持ち物」、そして今回『きみはきみらしく』のテーマは「流行」。「能力」「持ち物」「流行」と並べて見ると、人が人を評価するときに、必ずといっていいほど使う三つのモノサシと言えるかもしれません。有能で大きな仕事をしている人は「ビッグ」、ブランド品や宝石を持っている人は「リッチ」、服装や髪型を決める鍵は「トレンド」。ビッグでリッチで、トレンドをリードしているような人を、「セレブ」というのでしょうか?でも、この三つは、「素の自分に自信のない人の変装の道具」のようにも思えます。今は誰もが自信を失っている時代かもしれません。そんな現代人を代表するキャラクターがパンチネロ、その正反対のキャラがルシア、その作り主がエリです。
カリスマ美容師のウィリーが、「今年の流行は、緑の鼻です!」と言うと、流行は決まり。みんな鼻を緑にするためにウィリーのところに集まってきます。「流行はマスコミによって作られる」という、今どきの傾向が風刺されています。
パンチネロは、「ぼくはやらないよ」と言っていますが、周りがみんな緑の鼻になって行くと、流行に遅れるのがだんだん怖くなってきます。「なんだ!今どきその鼻は?!」と笑われると、すっかり自分を失って、緑の鼻にしてしまいました。
それからの変わり身の早さ!堂々と上を向いて歩き、二人の友達と大きな声で話します。「おい!あいつ普通の鼻だぜ!」流行に遅れた仲間を笑います。すっかり自己満足の三人。そのとき、鼻を赤くした仲間が通りかかります。「なんだあれ!」と笑っていると、通る人がみんな赤い鼻!「ドキッ」としても手遅れでした。流行は赤に変わってしまったのです。あわてて赤い鼻にしたときは、流行は黄色、黄色にすると青、次はピンク、変わるたびに鼻の色を変える。気がつくと、パン屋さんのパンのにおいがわからない。鼻が利かなくなって、疲れ果てて「もうイヤだ!」そこにルシアが来て、「エリが心配してるよ!」
「もとの自分に戻りたい」というパンチネロたちを直すエリ。空気が美味しくなって、自分を取り戻した仲間たちが、手をつないでスキップして行きます。
職場は成果主義になり、テレビが国民を洗脳できるほどの力を持ってしまった日本。日々自分を失っていることに気づくこともなく、流行を競い合っている「パンチネロ」たち。その中にクリスチャンもいることに、このアニメが気づかせてくれますように。