ブック・レビュー 「伝道」と「奉仕」に携わるすべての人へ
友納靖史
日本バプテスト連盟・常盤台バプテスト教会主任牧師
「なぜ私だけが生き残ったのか」「神がいるのならどうして?」……。二万人を超える人々が一度に命を失うという空前絶後の苦難に遭い、残された痛みを負い、今を生きる人々の心に湧き上がる「魂の叫び(スピリチュアル・ペイン)」に真摯に向き合った牧師たち。
東日本大震災により、目の前で苦しみ嘆く人々との出会いから生まれた「現場の神学」には、日本プロテスタント宣教約一五〇年間にわたり培われた神学を超越する言葉や思想も収められている。しかしこれらもまた、著者らが真の牧会者であるゆえに発せられた「魂の叫び」である。
宣教活動が困難とされていた東北地方の諸教会は、あの日一瞬にして地面とともに信仰が大きく揺さぶられた。それまで教義教派の違いにより、一致することが困難であった教会が、仙台地区を中心に、「祈り」とともに被災者支援という「ミニストリー(奉仕)」によって、一致へと導かれる軌跡を記す秋山氏。被災地支援を協働できたのは、「私たちが受けた福音は、人間の一番の痛みのところに主が立たれた」(三五頁)と信じ、そこにともに立つ者へと導かれたからだ。教会が「福音伝道」と「奉仕活動」との違いを明確に自覚し、あえて「伝道」を控え、時を待つ重要性を訴える。また、これまで他宗教の領域とし、日本の教会がかかわらなかった「弔い」という奉仕の現場に引き出され、たとえ「ただ立ち尽くすことしかできない」(六八頁)としても恐れずに、「何もしない」で、キリストの教会が「そこにいる」ことを担い続ける、真のパストラル・ケアの重要性を証しする川上氏の言葉も深く心に響く。本書で語られる人々の「魂の叫び」を正しく聴き分け、日本がこれから直面するであろう苦難にも、恐れずにかかわる勇気と信仰を祈り求める時、聖霊の力を注がれた教会により、神の豊かな祝福があふれ出し、日本に住む人々の「魂が生き返る(リバイバルする)」(一一〇頁)に違いないと希望に胸熱くされる一冊だ。主に託された「伝道」と「奉仕」という福音宣教の業を、誠実に携わることを願い求めるすべての人に薦めたい。