ブック・レビュー 「内住のキリスト」の奥義


鎌野善三
日本イエス・キリスト教団 池田中央教会牧師

『わが内に住むキリスト』という書名を見て、すぐコロサイ書1・27「この奥義とは、あなたがたの中におられるキリスト、栄光の望みのことです」を思い出す方も多いことでしょう。そのとおり、本書の後半部は、コロサイ人への手紙、ならびに同時期に書かれたピレモンへの手紙の講解説教集です。
著者が牧会なさる香登教会での礼拝説教三十週分が毎回五頁にまとめられており、深い内容がわかりやすく書かれています。毎回扱われる範囲は二―八節ですから、聖書を開きながら読んでください。難解と思っている所が、「なるほどそういう意味か」と納得なさるに違いありません。
本書の特徴は、前半部にあります。ここで著者は、パウロの信仰の根本にあった「内住のキリスト」の奥義を、コロサイ人への手紙とピレモンへの手紙の概説ばかりでなく、旧新約聖書の様々な箇所の講解によって説明しています。
「内住」という語は『広辞苑』に載っていません。日本語として定着していないからでしょうが、聖書に親しんでいる方なら、「キリストが私たちの内に住んでくださること」という意味であることは、すぐご理解くださると思います。
本書の一〇頁には、「実にキリストが内にお住まいくださるという、この栄光に満ちた驚くべき事実こそは、福音の奥義中の奥義であって、まさに贖いのゴールであり、同時にそのところからキリスト者のいっさいが始まるというのです」と記されています。そして内住のキリストが「聖書全巻を貫く主旋律」であることが明らかにされていきます。
ヨハネ14・17に、「その方はあなたがたとともに住み、あなたがたのうちにおられるからです」とあるように、「内住のキリスト」とは、聖霊にほかなりません。ご自身を犠牲にするほど私たちを愛してくださった主イエスが、こんな罪深い私の内に住み、私を変えてくださるという「驚くばかりの恵み」を、本書を通して存分に味わってください。

『わが内に住むキリスト』
工藤弘雄 著
B6判 2,000 円+税
いのちのことば社