ブック・レビュー 「性といのち」を教えることは子どもの存在価値を認めること

 『お母さんのための性といのちの子育読本 』
水谷 潔
小さないのちを守る会会長

いのちと性の尊厳を忘れ、その結果、自らの存在価値も見い出せず苦悩する現代日本社会――。今、私たちが必要としているのは、まさに本書に記された言葉であると痛感しています。
助産師の立場から、子どもたちに性といのちの大切さを伝えている「いのち語り隊」。その活動は、毎日放送「情熱大陸」でも紹介され、現在では年間百件以上の出張授業や講演依頼を受けるほどです。そして、ついにこの度、普段の講演内容をとりわけ母親向けに記してくださいました。
本書は、第一に統合的な深さがあります。「いのちと性を伝えるということは子育てそのものですし、大人の生き方そのもの」と明示されている通りです。読者が教えられ、問われるのは、自らの子育てであり、親自身の生き様となるでしょう。母子に仕える現場から発せられる温かな愛に満ちた言葉は、心に響く最高の応援でもあります。
第二には、具体的な指針と優れた例示に満ちていることです。性について、「どの時期に」「何を」「どのような言葉で」伝えるかは、親にとっては大きな課題。それに対して本書は具体的に表現する言葉を例示し、語る側の意識や姿勢についても適切なアドバイスを与えてくれます。子どもを取り巻く性情報の氾濫に不安を覚え、学校での性教育に疑問を持ちながらも、どうすればよいのかと悩む方々には、まさに最適と言えるでしょう。
第三には、普遍的で親しみやすいことです。「クリスチャンだけが読んだらあまりにもったいない!」それが私の正直な感想です。未信者の方がすんなり受け入れることのできる内容と語り口です。未信者の読者にこそ、いのちと性の尊厳を伝え、その根底にある神様の存在や信仰の必要性にまで思い至らせる書物だと思います。子育て中の未信者のお母さん方への最高のプレゼントとなることでしょう。
ともに子育てをする、ぜひ男性にもお読みいただきたいと願います。また、性について教えることに躊躇する教会や教会学校の指導者の方にも、明確な指針と語るべき言葉を与え、一歩を踏み出す後押しをしてくれることでしょう。