ブック・レビュー 「等身大で正直」な神への祈り
ピアノの音色とともに……
陣内 大蔵
日本基督教団 東美教会牧師
シンガーソングライター
沢知恵さんの新刊。沢さんの歌の歌詞と、日々の彼女の祈りがつづられています。インストゥルメンタルのCDも付いているではないですか! ならば、そのピアノの音をBGMにさせていただきながらページをめくります。
ひとめくり、ふためくり……。ゆっくりと引き込まれていく。沢さんのその「祈りのことば」に浸っていると、谷川俊太郎さんが訳した『かみさまへのてがみ』(エリック マーシャル、 スチュアート ハンプル編集/サンリオ)を思い出しました。子どもたちが思い思いに書いた神さまあての手紙の数々。自由に素朴に正直に書いたその手紙はとても可愛いもので、でも大人にも響く、いや大人こそが読むべきだなぁと感じたかの本。
沢さんの祈りがどれもこれも「等身大で正直」だからでしょう。読む者自身の言葉と重ね合わせたくなるような、そんな祈りがいくつも現れてきます。それらをかみしめては、自分と神さまに関してゆっくりと思いを馳せることができます。
するとタイミングよく、奥勝實さんの銅版画が目に入ってくるのです。ひとつの画に複数の表情が潜んでいるようなイメージ。「あ、今の心持ちはこの画のうつむき加減に似ている」。そんなふうにこれまたそっと自分自身を重ねている自分がいます。
「どうやって祈っていいのかわからないんです」
祈りとは何でしょう。そんな質問を受けることがあります。でも、形は説明することができても中身に関しては僕もうまく言えません。ただ、祈りの中に「自分以外の存在がある」ということは真髄だと思います。沢さんの祈りもそう。沢さんの祈りには、こちら側がお邪魔させてもらえる空間がちゃんとあります。この本に浸っていると沢さんとともに祈っているような心地がしてきます。
「いつもそばにいてください」
気がつけば、流していたCDは三回目のリピートになっていました。
『それだけで美しい』
沢知恵 著
奥勝實 画
B6変型判 1,995 円
いのちのことば社