ブック・レビュー 「聖書力」は生きる力
高田 篤美
B・F・P・ Japan局長
人は誰しも二つの顔を持っているのではないでしょうか。「しっかりしていますね。頼りになりますよ」と評され、その評価に一生懸命応えようとする外側の顔と、「実はそんなにしっかりなどしていない」という自分の現実を知る内側の顔です。内面と外面と言い換えてもいいかもしれません。この二つの顔がかけ離れていればいるほど、人は精神のバランスを保つのが難しくなるような気がします。
私自身かつて、この二つの顔のギャップでずいぶん悩みました。元気で明るく、責任感を持って“がんばって”外面を維持する自分。しかし、否定的で暗く、無責任で、怠け者の内面が、がんばっている私の足をひっぱり、時々メッキがはげてしまうのです。それが人間関係にも影響を及ぼし、自分の内面の葛藤を深め、なんとも言えない疲労感と虚無感をもたらすという負のサイクルが心にありました。
この外面と内面が少しずつ歩み寄り、一つに解け合うとき、人は本当の喜びと平安を得ることができるということを体験的に知りました。その融合は、実にさまざまな出会い(神、聖書、人、書籍、試練、病気……など)を通して、三歩進んで二歩下がるような、ゆっくりとしたペースで起こりました。そしてその過程は、今なお続いていますが、中でも中野雄一郎先生と奥様のめいこ先生との出会いは、その大きな起爆剤となりました。先生ご夫妻の無条件の受容の中に自分が受け入れられたことを知ったとき、肩の力が抜けました。今回出版された『聖書力』は、まさにこの二つの顔を一つにするためのガイドブックの一つと言えるのではないかと思います。世の中に生きる企業戦士たちは、高いモチベーションを維持し、人間関係を構築し、常に業績を上げ、強い責任感を持って社会と家庭を支えていくことが求められています。しかしこの本は、自分でもどうすることのできない、弱い誰にも見せられないような内面からスタートしてよいのだ、いやむしろそこに驚くべき解放の真理があるのだということを教えてくれます。
心に悩みを抱える人にとって、この本がひとつのきっかけになるのではないかと期待しています!