ブック・レビュー 「良い意味で言葉にこだわってみる」と見出す、豊かないのちの糧

 『 いのちへのまなざし 人間理解を深める55のメッセージ』
竹本邦昭
日本福音キリスト教会連合・札幌希望の丘教会牧師

「人間を理解するためには、人間の『いのち』に対する洞察が不可欠!」という本の帯のことばが、目に飛び込んできます。精神科医として、ホスピス医として、キリスト者として見つめてきた「いのち」の様々な側面に光をあてている本です。
「これほど密度の濃い内容を、しかもわかりやすく全文百九十一ページの中に凝縮してくださっている本に出会うことは珍しい!」。これが、本書を読んだ私の最初の感想です。その上、くり返し読むうちに、さらに著者の学識と経験の豊かさが、読む者の心にじわじわと伝わってきます。
この本の副題は「人間理解を深める55のメッセージ」です。以前、いのちのことば社から出版された同著者による『心をいやす55のメッセージ』(二〇〇二年)という書物の姉妹編というイメージで書かれたそうです。
全体は五つの章に分けられています。Ⅰ「体といのち」、Ⅱ「心といのち」、Ⅲ「社会といのち」、Ⅳ「魂といのち」、Ⅴ「信仰といのち」。五つの章それぞれの中に、三ページほどで読み切ることができる話が十話ほど、合わせて五十五話がおさめられている短編集です。
どの項目も魅力ある珠玉のショートメッセージです。
「死ぬこと、死なれること」の中で、柏木先生は「日本語独特の受動形から、人の誕生と死の一側面を考えてみました」(四〇頁)と述べて、「……良い意味で言葉にこだわってみると、それが事の本質に触れることがあるものです」と結んでおられます。私は、このことばをはじめ、著者の数々の名言から、聖書のみことばに仕える牧師の一人として、「良い意味で言葉にこだわってみる」ことの大切さを改めて教えられました。
牧師に限らず、どの分野で生かされている方にとっても、この一冊は必ず豊かな心の財産となるはずです。
一読をおすすめします。