ブック・レビュー 『お金ではなく いのちです』
――もうひとつのMKタクシー物語

お金ではなく いのちです ――もうひとつのMKタクシー物語
市村 和夫
インターナショナルVIPクラブ 代表役員

不況の日本社会に新風を吹き込む

 私も東京で何回かMKタクシーに乗ったことがありますが、一度乗ると、再び乗りたくなるのがMKタクシーです。その理由が本書を読んでよくわかりました。

 日本の政治・経済・社会が混迷する中で、今話題のMKタクシーの青木秀雄・副会長が本書を出版されました。土台のない日本の国家と個人、そして高い理想を掲げて生きようとする若者が少ない日本社会に、新しい価値観によって生きるという新風を吹き込んだ本であると言えます。

 不況の中で、なぜMKタクシーが躍進し続けているのか、それは著者自身が、自分ひとりで生きてきたのではなく、多くの人の助けによってきたことから、MKタクシーは、一貫してお客様に徹底的に仕えるというサービスの大切さを強調してきたところに、その秘訣があります。

 低迷する日本経済を立て直し、企業の再生のために、本書は「ビジネスの書」「経営の書」としてビジネスマン必読の書です。

 また本書は、大切なことはお金や物質ではなく、いのちであることを強調しています。日本は戦後、高度成長時代に、目に見える物に頼って生きてきましたが、一九九〇年代バブルの崩壊とともに、今まで築き上げてきた多くのものを失いました。自己中心的な拝金主義の日本社会の中にあって「お金とは、大いに稼ぐものであって、大切なことは上手に使うことである」「他者のためにお金を使う人が富んだ人で、他者のためにお金を使わない人は貧しい人である」ことを教えてくれます。

 そして、最も大切なことは、私たちの「いのち」であることを教えています。本書はビジネス書にとどまらず、人間の生き方を教えてくれる「人生の書」でもあります。個人の人生を立て直し、逆転V字回復を願っている人に、最適の書と言えます。

 日本社会が行きづまり、閉塞状態の中で、明るい未来、そして、勇気と希望を与えてくれる本として、ビジネスマンのみならず、すべての日本人に読んでほしい一冊です。