ブック・レビュー 『これから戦争なんてないよね?』
~自由がふつうじゃなくなる日~
山崎 龍一
キリスト者学生会(KGK)事務局長
新ガイドラインから共謀罪まで、キリスト者として現代を見る目を養う
キリスト者を脅かす歴史は、国家の側から「正義」の名のもとにひっそりと近より、気がついたときには信仰者の尊厳と自由を根こそぎ奪ってしまう……。自民党新憲法案には自衛軍が明記され、自衛隊広報センターでは「守りたい人がいる」という“かっこいい”フレーズで、自衛軍の意義が宣伝されています。戦争もまたいつの時代にも正義の名のもとに遂行され、愛する人々を失った哀しみに多くの人をさらしてきたのです。キリスト者であるだけで職が奪われ、投獄されたこともわずか六十年前の歴史上の事実であり、再びその歴史が繰り返されようとしているのが日本の現状です。この本は、やさしくも筋の通った「西川の翁」とちょっとお茶目な「ななみ」のユーモラスな会話がマンガになって、忍び寄る歴史の足音に耳を傾けることができるように工夫されています。新ガイドラインから共謀罪まで、法整備という名のもとに人々の尊厳が国家に蹂躙される準備がいかにはじまっているかをわかりやすく教えてくれます。
また、若い女性が実際に国会を傍聴して共謀罪が審議される場面を体験し、靖国神社の思想を表現している遊就館を訪れ、靖国神社を大切にする人々の吐露に触れます。「現場で考え」、臨場感あふれる内容となっています。
さらに先日、九月二十一日にテレビや新聞でも取り上げられ全面勝訴した「予防訴訟」(君が代を強制する都教委の方針に反対する裁判)の原告のひとりである都立高校教諭にもインタビューし、教育現場での問題点をわかりやすく伝えてくれます。この教諭が「ボクはそのような人たち(処分を覚悟で取り組んでいる先生たち)と共同して『強制』反対の運動をしています。でも、ボクが本当に共同したいのはクリスチャンの人たちです。日本にある教会の人たちの祈りと支援が欲しいのです」と語っているのが印象的でした。この本の読者は、キリスト者として現代を見る目が養われ、「祈りの支援」につながることでしょう。