ブック・レビュー 『たいせつなきみ with DVD』
友野富美子
俳優
パンチネロ、十周年おめでとう!
パンチネロ、出版十周年おめでとう。君と出会ってもう十年経つんだね。木の人形達のウイミック村は、今もだめじるしシールやお星様シールで、人にレッテルを貼り続けているのだろうか?人間の世界も、相変わらず「あいつはだめだ」とか「彼は一流だ」とかって他人を気にしながら、自分がどう思われているかに汲々として、「負け組」「勝ち組」なんてつまらないことばかり言っているよ。
舞台の上で君の役をやらせてもらって、お客様から「パンチネロは私だと思いました」という感想をたくさんいただいた。みんな「他人の評価を気にしている自分から変わりたい」「ほんとうの自分をそのまま受け止めて欲しい」って望んでいるんだね。そう、みんな「君はそのままでいい。たいせつな存在だ」って言ってほしいんだ。
だめじるしばかりつけられている君が、つくりぬしのエリに問い掛ける場面では、私もいつも本気で神様に向かって叫んでいたよ。「こんなぼくのことがどうしてたいせつなの?」。失敗ばかり。みじめな自分。でもつくりぬしは言ってくれる。「おまえがわたしのものだからさ。だからたいせつなんだよ」って。みんなが言ってほしいことを、つくりぬしはずっと言ってくれていたんだね。君とこの作品を通して、そのことを知ってもらいたい、それが私の願いです。
この十年の間に、私も二人の子どもの母親になりました。二人とも君のことが大好き。この間、教会の古書バザーに出す本を整理していたら、上の子が「おかあさん、『たいせつなきみ』は出さないでね!」だって。(大丈夫だよ。パンチネロは私にとってもたいせつな友達なんだ。みんなには今度出た十周年記念DVD付きを買ってもらおうよ)
そう、いつも本で君のことを読み聴かせていたけど、ある時DVDも観てみたんだ。もう本を読んでって言わなくなるか心配したけど、今はどちらの君も好きみたい。よかった。