ブック・レビュー 『わが故郷、天にあらず』
─この世で創造的に生きる
山崎 龍一
キリスト者学生会 主事
遊びにも信仰がいる
この本は、豊かな福音理解こそが、この世で生きる意味と使命を明らかにすることを、身近な例話を用いながら分かりやすく説いてくれます。著者が学生時代に、学問およびこの世にあるさまざまな出来事にどのように関わっていけばよいのかという疑問を持ったことから始まり、人生の経験と豊かな福音理解を通して、その答えを見いだしていくプロセスを丁寧に語っています。
「この世界は私たちの住まい(故郷)だ。私たちは、この地で生きるように造られた。罪によってすっかり歪んでしまってはいるが、神はそれを正そうとされている。それゆえ私たちは、回復され新たにされた身体をもって、回復され新たにされた天地に住むことを喜んで待ち望んでいる」と述べられているように、この地上におけるキリスト者の生きる使命を、創造から終末に向かう神様の歴史全体の中から見いだしています。
一般的には、使命感を理解したキリスト者が仕事に取り組むとき、熱心さと勤勉さにあふれるものですが、そこでは休息や遊びという側面が置き去りにされがちです。しかし本書は「遊び」に対しても信仰的な位置づけをしています。「遊びは、クリスチャンにとって最も崇高な召しの一つだ」あるいは「遊びにも信仰がいるのだ」と、神様の平安の中で生きていくことのすばらしさを物語っています。
そして、いつも役に立つことや成果の上がることばかりに時間を費やし、人生を豊かに楽しむことが上手でないクリスチャンに対して、本来の神様との交わりとは、勤勉さと楽しさをあわせもつものであると伝えています。
伝道することは、そのような豊かな人生に人々を招き入れることであり、この世から連れ出すことではありません。その時、私たちの生活が豊かな福音理解へと導かれ、また伝道の意味も再発見されるのです。