ブック・レビュー 『わが父、孫良源』
菊池 良一
日本同盟基督教団 総主事
殉教者の血と愛を知って
尊敬する朴永基先生の翻訳により、孫東姫女史の『わが父、孫良源』が、日本のキリスト教会に与えられたことを感謝します。一人でも多くの方に読んでいただき、重く深い感動を悔い改めとともに共有できればと思います。本書を通して教えられたことは、韓国教会が経験した三重苦と殉教者の歩みです。日帝時代の執拗な迫害、神社参拝を強いられた教会の分裂と混乱、解放後の民族動乱と共産主義者の攻撃、これら想像を絶する苦難の中を、孫良源師は、神のみ畏れ、みことばにのみ従い、共産軍の銃弾に倒れるまで信仰告白を貫かれたのでした。孫師をはじめ殉教者たちの血の告白が、今日の韓国教会盛栄の原点であることを知るとき、戦後五十年を機に一斉に戦責表明をした日本のキリスト教会が、今、そして今後どの様な悔い改めの実を結ぶべきかを、私たちに鋭く問いかけているように思います。
第二は、殉教者の驚くべき愛とその実践でしょう。孫師はその牧会の生涯を、ハンセン病の兄姉に仕えることを至上の喜びとし、生活を共にされました。それだけでも愛の大きさを感じるのですが、驚くことに、二人の息子を惨殺した共産兵の命を助け、養子として受け入れ、信仰にまで導いたのです。その生き方が「愛の原子爆弾」と形容されるゆえんでしょう。
こうした愛とその実践は、とかく観念的で自己満足になりやすい私たちの愛を粉砕し、神の愛へ向けさせます。この大いなる模範を前に十字架を仰ぎました。
最後に、孫良源師を霊の父と仰ぐ朴先生の並々ならぬ翻訳のご労に心から感謝し、孫師の長女、孫東姫女史の日本講演が実現することを願っています。