ブック・レビュー 『アダムのパンツ』
岸 義紘
JTJ宣教神学校学長/ミッション2001伝道者
現代日本の奇蹟の要因は説教の実力と魅力にあり
二〇〇五年の主日礼拝出席者数・平均一四八四人、祈祷会出席者数・平均四八三人、バプテスマを受けた人・九〇人。どこの国の教会でしょう。日本です。まさか! これは信じがたい数字、夢のような教会です。それが、本書の説教者である、大川従道牧師が育て上げてきた、大和カルバリーチャペルです。
これは現代日本の奇蹟の一つです。奇蹟。しかし偶然に起こったことではありません。必然的な奇蹟です。神のなさったこと。「そのとおり」ですが、その教会を祝福して神さまがなさったこと。この必然と、教会が整えた、神さまの祝福を受ける条件が何であったのかを、私たちはこの一冊を通して推察することができます。
最大の要因の一つは、説教の実力/魅力でしょう。一読してわかるのは、次のことです。
- 【1】説教者の勤勉。
- 聖書を学び良書をあさって、本質をつかんでいます。
- 【2】サービス精神。
- 説教を聞く者の側に身を置いて、「難しいことを面白く、面白いことを深く、深いことを易しく」語ることをモットーに、説教は平易で学ぶこと大です。
- 【3】霊性の高さ。
- 全編を貫いて、その霊的格調を引き上げているのは、召されたしもべとしての主への愛、牧者としての信徒への愛、説教者としての全身全霊を傾けた献身性です。
- 【4】宣教への情熱。
- 人々をキリストへ、日本を、世界をキリストへ。この熱い思いが説教に迫力を与えています。 十一編の説教はすべて同じスタイルで独特です。あえて分類すれば、おそらく題目説教の枠組みでしょう。牧会と伝道に心を絞っているので、すべて実際的です。日本のような国の礼拝説教に、ふさわしいスタイルでしょう。
他方、テキストのメッセージを最優先で伝達する講解説教/釈義説教に取り組む私たちの課題は、「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを明るく」(井上ひさし)ではないでしょうか。そのヒントが、この説教集にはいっぱいです。