ブック・レビュー 『キリストは神か偽善者か?』

『キリストは神か偽善者か?』
中村光弘
日本キャンパス・クルセード・フォー・クライスト スタッフ

簡潔明瞭な論調でイエスの存在を確信させてくれる一冊

 著者は長年、キャンパス・クルセード・フォー・クライストの巡回伝道者として世界数十か国の学生、青少年に人生を変えるキリストの力を宣べ伝えてきた人物である。本書は彼の数十冊ある著書の中でも初期の代表作。私自身、信じてからもさまざまな疑問にぶつかり確信を持てずにいた時、本書に出会い、聖書のことばが真理であるという確信はゆるぎないものとなった。以来、同じように疑問にぶつかっている学生に出会うと本書を薦めていたのだが、絶版になり残念に思っていた。その本書(旧タイトル『神か大工か』)がタイトルも新たに新版で登場することになったのはうれしい限りである。

 新版でも、イエスを聖書の主張どおりの存在として信じることがどうして理にかなっているのかをさまざまな論証を用いて説いてくれているのだが、簡潔明瞭な論調はそのままに、しかし細部に変化がほどこされている。新しい情報も追加されている。また、構成にも工夫が加えられ、若い世代の読者でもすんなり入り込めるようにと、著者自身の証しで始まっている。この証しはパワフルである。ここだけでもすべての人に読んでもらいたい。(ただし、結末を知るには最後まで読まないといけないのだが。)

 キリストのわざを耳にしたときに「もしかすると、自分が求めていた答えはここにあるのかもしれない」と思う未信者は意外と多いはずである。しかし一方、未信者の多くは無神論的学校教育による「洗脳」を受けている。また、さまざまな宗教団体のいかがわしい所業を繰り返し耳にすることによって「簡単に信じ込んではいけない」という懐疑心をいだいてしまっている。そうした未信者たちの知的ニーズを満たすと同時に、入り口に入ってみたものの、それ以上踏み込むことができないでいる信者たちに確信を与える起爆剤となってくれることを願っている。信仰と思考とは矛盾しないのである。