ブック・レビュー 『キリスト教倫理』

『キリスト教倫理』
眞田 雅臣
日本バプテスト教会連合・練馬バプテスト教会牧師

確かな人生の羅針盤としての一書

 最近のカーナビゲーションシステムは便利です。目的地を入力すれば、たちどころにルート、時間、高速料金が表示され、あとは音声案内に従って運転すれば確実に到着します。人生にもカーナビがあれば……、特に昨今の混迷する世界情勢と経済不況の中に生きる私たちは、誰もがそう思うでしょう。

 しかし人生はそんな単純なものであるはずもなく、仮に『人生ナビ』ができたとしても、目的地が明確でなければ人生のルートは検索できません。そもそも、それが差し示すルートがベストかどうかは一回限りの人生では検証のしようもないでしょう。

 幸いなことに、私たちクリスチャンには、『聖書』という人生のガイドブックがあり、目指すべき目的地と幸いな人生のドライブのための心得がはっきりと示されています。しかし、私たちはそれを正しく読み取ろうとせず、またご聖霊と言う同乗者がいるのにその方の声を聞かずに、流れゆく景色に目を奪われて、危険な道に迷い込んでしまうこともしばしばです。

 著者が、あとがきで「グローバル化するポストモダンの時代にあって、私たちは羅針盤を失った舟のように漂流しています。そこで、激しく変化する社会に生きる指針を考えるために、『キリスト教倫理』を世に出すことにしました」と記しているように、本書は読者に羅針盤のごとく目的地を指し示し続けるとともに、混迷する時代の中で適切なドライブコースを選び取るために必要な指針を、総合的かつ体系的に提供してくれます。

 『キリスト教倫理』という少々硬めな書名にしり込みされることなく、老若男女すべてのクリスチャンに読み、ともに学び、それぞれの人生に生かしていただきたい、そしてそのことを通して、充実した毎日を過ごされるとともに、教会をさらに豊かなものとし、また世界を変えていく、そんな無上の人生のドライブを満喫していただきたい、と願っています。