ブック・レビュー 『キリスト教神学』第1巻
河野 勇一
日本バプテスト教会連合 緑教会 牧師、東海聖書神学塾 教師
信仰の確信と喜びを与える「福音主義神学」の決定版!
私は約二〇年前、米国のべセル神学校において、エリクソン師による「組織神学」を受講する機会を与えられました。そのとき、いろいろな神学テーマについて歴史上の諸見解や現代における種々の立場を広く、公平に紹介しつつ、福音的な観点から明晰な切り口で分析、評価する師の講義に感動を覚えたものでした。まもなく、それが三巻にわたる「Christian Theology」として順次刊行されました。すでに帰国していた私は、クラスを再受講するような気持ちでそれを読み、ことあるごとに参考にしてきました。その改訂新版がこのたび翻訳出版され、日本語で多くの人に読んでいただけるようになるとは、実にうれしいことです。
わが国では、「教科書的」という言葉は「総花的で個性がない」ことの代名詞であり、あまり良い意味で使われません。しかし、この神学教科書は決して単調でも、いろいろな立場を単に羅列説明しているものでもありません。「神の荘厳さ」を基調に、偉大な神の恵み深さとキリストの福音の豊かさが色彩を加えて、キリスト信仰の確信と喜びを与えてくれます。まさに、福音主義神学教科書の決定版といえるでしょう。
今回の第一巻は、いわゆる神学序論と聖書論のみです。序論の「神を研究すること」では、聖書に則して福音的に神学する方法を緻密に論じ、「神を知ること」と題する聖書論では、新正統主義などを批判しつつ根本主義の陥りやすい危険をも示して、健全な福音主義的理解を提示しています。
現代的な思潮と真摯に取り組みつつ、聖書的にキリスト教神学体系を学びたいと思っている牧師や諸奉仕者、信徒がそれぞれのレベルで用いうる本として、日本の教会に大いに貢献すると信じます。さいごに、読みやすい日本語にしてくださった翻訳者の労にも感謝いたします。