ブック・レビュー 『チョット聞けない男女のお・は・な・し』
笹岡 靖
『聖書と精神医療』編集長、ARKホーム・エデュケーションサポート協会代表
教会で「ナカナカ」聞けない男女の話へ発展するために
「チョット」聞けないような性のテーマについて現代の若者にフォーカスした本を、「小さないのちを守る会」の働きに新しく加わった水谷潔先生が書いてくださった。以前から性の問題に取り組んでこられたが、軽妙な口調、正直な視点から取りあげた一冊である。この本では、著者の自分のことばで語ろうとしている姿勢が印象的である。私は神学生のころに、神学校の学生を対象にした修養会で性の問題を扱った分科会を担当したことがある。会の途中で参加者に感想を尋ねると、「こんな内容の会を期待したのではありません」と女性の参加者から言われてしまった。たいへん恥ずかしく、途中で帰りたくなった。
性の問題については、男女の違い、各ライフステージの違いなどがあり、いろいろな反応があると予想するが、あえて一歩を踏み出した著者の勇気に感謝する。結局のところ、人に何かを伝え、教え、導く上で問われてくることは、どれだけ自分のことばを持っているかということなのだろう。
「性」は「生」に通じることであるのに、「生」や「いのち」を語るべき教会でなかなか取り扱われることがないテーマである。聖書の教えは「生めよ。ふえよ」と仰せれた主のことばから始まっている。聖書的な家族・家庭観という枠組み ── 産むこと、そして、教え育てること ── の中でこそ、「性」の位置付けがいっそう明確にされるだろう。続編にも期待したい。
若い人の反応がどうか気になったので、十四歳になる息子にも読んでもらった。「読みやすく、性が清いものであることを教えてくれた。聖書から正しく学ばなければと思った」と語ってくれた。本著が若い人々に届き、用いられることを祈る。そして、この本がきっかけとなって、教会で「ナカナカ」聞けない男女の話へと発展することができるならば、若い人々が主にあって整えられる大きな助けとなるであろう。