ブック・レビュー 『トリビュレーション・フォース』
込堂 一博
日本福音キリスト教会連合 旭川めぐみキリスト教会 牧師
「邪悪に立ち向かえ」というチャレンジ
私は、本書を読みながら使徒ペテロのみことばが、強く心に響いてきた。「堅く信仰に立って、この悪魔に立ち向かいなさい」(Ⅰペテロ五・九)。前書『レフトビハインド』では、キリストの携挙に取り残された主人公の機長レイフォード・スチールは、この驚愕すべき出来事のなかで、夢中で真理を求めはじめ、悔い改めてキリストを信じた。そして娘のクローイも信じた。本書で、レイフォード・スチールは、同じように信じた他の二人とともに、「反キリスト」である国連事務総長カルパチアに敢然と立ち向かい、信仰を守り通すことを決意する。カルパチアは、表向き世界平和を唱えつつ、その一方で全世界を自らの独裁体制に置こうとする恐るべき邪悪な野望を抱いていた。それは、あのナチスのヒトラーによる恐怖に満ちた大量殺戮時代を連想させるものだ。経済不況にあえぐ現代社会だが、世界各地で「極右勢力」が台頭しつつあるのは、不気味な兆候である。昨年九月十一日の同時多発テロ事件以来、世界中で暴力の連鎖が起こり、戦争と戦争のうわさが充満している。いつ意図的に、もしくは偶発的に核テロや核戦争が勃発してもおかしくない状況になりつつある。そして私たちの国も戦争のできるように準備が着々と進められていることは、憂うべきことである。
こうした世界の現実を直視するならば、大患難時代に突入していなくても、キリスト者は、多くの患難や困難に直面している。しかも今後ますます困難な時代になることが予想される。
それだけに本書を読んで、キリスト者である私たちは、今こそ本当に目覚め、悪魔と邪悪に立ち向かい、真実な信仰生活を送るべきだというチャレンジを受けた。
携挙の時期などを巡って、キリスト者の間に神学的な意見の相違があったとしても、キリストの再臨は、聖書の預言のとおり確実に成就するであろうから、使徒パウロのように、「今日か、明日か」という再臨を待望して生きていきたいと切願している。