ブック・レビュー 『バプテスマに備えて――信仰生活を始める人のための本』

『バプテスマに備えて――信仰生活を始める人のための本』
中西 正夫
日本バプテスト教会連合 金剛バプテスト教会 牧師

バプテスマをためらう人に確信を与える

 国民の99パーセントがクリスチャンでない日本において、牧師が求道者から尋ねられる質問で、最も多いのは「バプテスマ」に関するものであろう。それはほとんどの場合、ある種の誤解に基づくものが多い。それゆえ牧師はまずその誤解を解きほぐし、聖書から説明する作業に時間と労力を要する。そんな時、平易にしかも聖書的に解説してくれる本があればと、牧師なら願うものである。

 東京中央バプテスト教会牧師の横山武先生が、今回新たに改訂版として出された本書は、まさにバプテスマから信仰生活の基本まで教える「助け」となる本である。

 著者は長年の牧会経験から日本の求道者が「バプテスマ」に関して直面する疑問や誤解を実にわかりやすく解きほぐしている。たとえば一章の「バプテスマの準備」で「住民登録の印ででもあるかのように、バプテスマを受ける」(17頁)とか「まじめに努力している人々にまれに見られる態度ですが、まず自分の力で過去のそれらの問題(悪習慣)を解決し、きれいになってからイエスを信じ、バプテスマを受け」(22―23頁)るといった誤解を挙げつつ解説しておられる。読んでいて思わず様々なケースを思い起こしてしまうほど現実的なものばかりである。しかもそれらに対する著者の解説には、聖書からの洞察が裏打ちされており、読者は共感を覚えるのではないだろうか。

 「バプテスマ」という教派的色彩が出やすい主題を著者は、「はしがき」で「異なっているところをいたずらに競うまえに、まず、みことばが語る根本的な真理をしっかりと受け止めることをこそ、努めるべきでしょう。そのときに初めて歴史的、社会的、教派的な差異が、お互いを生かす建徳的な要素として働きます」(4頁)と語る。

 教派を越えて、求道者はもちろんのこと、伝道の入口で導きの苦闘をしている教職にお勧めしたい本である。