ブック・レビュー 『ビジネスと人生と聖書』
――勝利へのマスターキー
林 晏久
フェローシップ・ディコンリー福音教団 住吉山手キリスト教会 牧師
「ゆるがない土台」と「変化へのチャレンジ」
本書を読み終えた時、著者の人生に対する喜びと感動が伝わってきました。本書はただの成功談ではありません。また、ビジネスでの成功のためのノウハウ本でもありません。これは一信仰者が歩んだキリストの証しです。本書にはたくさんの人物が登場します。その中で著者が特に影響を受けた人物の一人は、著者自身の妻、君子夫人でしょう。「出世してくださいとは言いません。もし、会社で首になるようでしたら、辞めても結構です。一緒に伝道しましょう」(二六頁)カネボウの筆頭専務にまでのぼりつめた要因の一つに、この夫人のことばから与えられた勇気があるように思います。そして、君子夫人は著者にとって、牧師でもあり、また信仰の導き手でもあります。夫人を通してキリストのゆるがない土台を与えられたと前著『逆転人生』(いのちのことば社刊)でも証しされています。
もう一人の人物は、ピーター・F・ドラッカーです。ドラッカーはクリスチャンであり、世界で最も有名な経営コンサルタントです。著者はこの人物を通して、危険を恐れず、常に変化にチャレンジする精神を学びとっています。
「ゆるがない土台」と「変化へのチャレンジ」、この二つは、本書のキーワードです。このキーワードから、評者はローマ人への手紙一二章二節のみことばを思い浮かべました。「この世と調子を合わせてはいけません。(中略)心の一新によって自分を変えなさい。」
著者は、信仰においては妥協せず、三回左遷、三回降格の試練を受けましたが、一方で常に変化に挑戦し、みこころに従って、自分を変えていったのです。
著者は一面パウロを思わせるところがあります。ビジネスの世界では、日本を代表する企業のトップにまで上りつめながら、エリート意識を感じさせません。また、福音伝道のためなら、どこへでも証しに駆けつける熱意の人です。
著者が日本のビジネスマンの救いのために、与えた影響は多大なものがあります。デフレ不況のなかで、苦闘するビジネスマンのためにも本書を心からお薦めします。