ブック・レビュー 『ヤンキー牧師の“必笑”恋愛塾』

『ヤンキー牧師の“必笑”恋愛塾』
安藤理恵子
KGK総主事

若者に真実を伝える格言の数々

 若者たちに聖書を語るときに、いつも意識させられるのは、いかに端的に鋭く真理を指し示す言葉を伝えられるかです。若者たちはみな真理を求めていますが、はじめから冗長で難解な言葉で話されると、残念ながら集中力が続きません。

 この本は短いコントの形をとりながら、読み手の集中力を落とすことなく、真実を理解してもらいたいという著者の願いに満ちています。長年の試行錯誤に裏打ちされた知恵が結晶した格言の数々は、危機的現状に対する著者の決死のチャレンジでもあります。

 相対主義が浸透した若者文化において、キリスト者として証しをしても「あなたはそういうことを信じているのね」とかわされることが増えました。しかしセックスの話になると別です。キリスト者として結婚前にセックスはしないと一言言えば、未信者の友人たちはこぞって「なぜ?」と聞いてきます。性や恋愛に対する態度は、若者たちの間のインパクトある信仰告白になりうるのです。このテーマについて説明する言葉を持つことが若いキリスト者の武器となり自信となります。

 このヤンキー牧師は(多少下品でも)、彼らの戦いと葛藤を明るみに出して、伝道の最前線の生き方を励ます言葉を持っています。

 中高生たちにぜひ読ませたい本書ですが、それ以上の方々にも一読していただいて、自然な形で実践と適用について若者たちと分かち合えたらと思います。そのとき私たちの経験と本心も問われることでしょう。後輩を導くということは、私たち自身が新たに主に取り扱われる決意をすることです。

 第五章「知ってほしい性的傷」は、教会全体への励ましとして受け取りたいと思います。これからの時代、罪の悔い改めと赦しと癒しが全人格的に実現する教会の本来的あり方が問われ続けていくでしょう。本書はその信仰と交わりの重要性を低いところから訴える、水先案内人ではないかと思うのです。