ブック・レビュー 『ヨセフの見た夢』
神の摂理に生きるとは

『ヨセフの見た夢』
舟喜 信
聖書宣教会 会長
日本福音キリスト教会連合 浜田山キリスト教会 協力牧師

「摂理のみわざ」への深い洞察が信仰の基盤を強める

 聖書が教える神の摂理についてのこの一冊の刊行を心から喜び、感謝したい。この本は、闇が拡がり激動が続く現代に生きる私たちキリスト者と、私たちの教会の必要に応える行き届いた内容を備えている。この国に生き、行きづまりを感じている人々に、摂理の神を知る信仰が知らされないままであるなら、宿命論、運命論に行きつき、それゆえの不安が迷信、新興宗教などへの依存に結びつきかねないとすることは的はずれではないであろう。

 著者は神の摂理を「神の主権に基づいてなされる恵みのわざ」と説明し、歴史を支配しておられる神が、私たち一人ひとりといつも共にいて、かかわり続けていてくださることの祝福を強調している。

 しかし、「摂理のみわざ」はいつも、あるいはそれぞれの段階で私たちに見えるわけではない。ヨセフの場合もどうなるかまったく分からない中で、驚くべき主の主権のみわざが進められていた。そうであるからこそ摂理による支配を知ること自体、信仰の目によってのみ可能とされる。「信仰の目を持って過去を振り返り、見据える、それが神の摂理であることを信じることである」とする本文の説明は具体的であり、正しい。

 本書の内容の豊かさは著者の学びと経験だけによるものではなく、むしろ著者の牧会での連続礼拝説教そのもののまとめであることが、より大きな理由であると思う。毎回のメッセージを通して深められていったであろう会衆の霊の渇き、著者自身が説教の準備の中で主によって気づいたであろう多くのこと、これらすべてが「摂理のみわざ」への洞察を深めたのではないか。

 複雑な時代環境の中で誠実に主に従い続ける諸教会の兄姉たちの信仰の基盤がさらに確かなものとされ、時代そのものに対して主権の主の恵みの伝達が進められるための一助にもなるよう、この本が大きく用いられることを祈らされている。