ブック・レビュー 『ヨハネの黙示録講解 愛と希望のメッセージ』
橋本 昭夫
神戸ルーテル神学校校長
難解な黙示録から身近なメッセージを語る
ヨハネの黙示録は近寄りがたい印象を与える。他方、戸の外に立ってたたく主イエス、涙をことごとくぬぐい去ってくださる神、新しい天と地の描写などにおいて、いくつも愛唱聖句を見いだす書でもある。たしかに黙示録は正典の一書である。村瀬俊夫牧師による蓮沼キリスト教会での連続講解説教をまとめた本書は、その副題の「愛と希望のメッセージ」にあるように、ヨハネの黙示録が、今日信仰者として生きる私たちにとって、いかに身近で具体的な福音のメッセージを語っているかを示している。
黙示録は一般に審判の書として理解され敬遠されがちであるが、著者は「黙示録はあくまで福音の書、喜びのおとずれの書です」(一二六頁)とし、そこに記された終末論を「福音の冠であると言いたい」(二七二頁)と特徴づけている。またキリストご自身が、信仰者の勝利を期待し願っている書でもある(四二頁)。
このような観点で、難解と思われるテキストからも、深く示唆ゆたかなメッセージを多く得ている。ダニエル書、エゼキエル書など旧約における黙示的テキストにも多く言及し、不明と思われる語にも平易で適切な説明を加え、また現代的動向(イスラム原理主義、環境問題、ハルマゲドンなど)も取り上げるなど複眼的である。ともすれば逸脱した方向に解釈が進みがちな黙示録の理解にあたって、その「象徴的・絵画的描写」ゆえに、「節度が求められ」(一二二頁)るとしている点が、本書をすぐれて建徳的な黙示録講解としている。
なによりも本書を特徴づけているのは黙示録によってしめされた礼拝の理解である。黙示録は天上の礼拝を描写する。地上の礼拝が、すでに天上の礼拝のリアリティにあずかっておりどれほどすばらしい祝福であるかを著者は強調する。
堅実で建徳的かつ平易な黙示録講解を得たことを著者に感謝するとともに、教会への大きな祝福として心から喜びたいと思う。