ブック・レビュー 『ライフスキルで人生を変える』
柏木道子
日本メノナイト・ブレザレン教団福音聖書神学校理事
大阪キリスト教短期大学前学長
人生をたくましく生き抜く力を得る技術
臨床心理学者であり牧師でもある著者は信仰者として人生の途上で私たちの多くが直面する困難や課題に取り組む時、どのような視点で取り組めばよいのか、大変示唆に富む書物をこれまでも出版しておられます。その流れの中での最新の著書『ライフスキル』では、書名が示すとおり現代に生きる私たちが人生を生き抜くための「人生力」(LQ)について、具体的には個々のライフスキルをいかにして高めるかについて聖書的な視点と臨床心理学的視点を統合して書いておられます。悩み多き現代人、そして霊的成長を切望している読者には励ましと慰めと指針が与えられる書物です。私自身は心理学を学んだ徒であり、聖書的人間観と心理学が明らかにする人間観を統合することの困難さを感じてきました。
著者はキーワードとして「人生力」に論点を集約し、現代社会が抱える、親子関係、夫婦関係、高齢者の問題など人間関係にまつわる具体的な問題を心理学的な手法で分析されており、読者に理解しやすい内容になっています。そして随所に心の理解からさらに魂への深みにまで論及されている点は牧会者の視点が強く出ていて魅力を感じます。
長い人生が常態となった現代では、何度か押し寄せる人生の危機に平安と喜びをもって乗り越えられるスキルを誰しも得たいと切望しています。しかし、それは簡単に身につくものではありません。著者はそのスキルの中核は家族関係・家族の絆を通して成長過程で磨かれるコミュニケーション能力であると述べています。
人生をたくましく生き抜く力・人生力は「何が良いことで、神に受け入れられ、完全であるのかをわきまえ知るために、心の一新によって自分を変えなさい」(ローマ人への手紙一二・二)を中心聖句としています。霊的な導きによる心の一新と臨床心理学的な洞察の統合を試みておられる優れた著書だと思います。霊的および心理学的人間理解を深めたいと願っている方々に推薦いたします。