ブック・レビュー 『レッツロール!』
三浦 喜代子
日本同盟基督教団 墨田キリスト教会 会員
信仰と希望と愛は、テロよりも強し
「最愛の夫であり、私の英雄である、トッドへ これからもあなたを愛し、人生の旅路を生き抜くことを約束します」冒頭の一文から早くも胸が熱くなる。リサ・ビーマー、今年三十五歳。夫トッドと平凡で平和な家庭を築き、何よりも神を第一としてけんめいに生きていた。が、ある日トッドは妻が未亡人と呼ばれるようになるなど考える暇もなく天に疾駆した。本意ではない。昨年九月十一日の同時多発テロで犠牲になったのだ。残されたリサは四歳を頭に二男一女のママである。第三子モーガンは今年一月生まれだから、パパとは一面識もない。
本著はあの日ピッツバーグに墜落したユナイテッド航空九十三便の乗客トッド・ビーマーの妻の手記である。
テロリストたちは、四機の飛行機をハイジャックし、二機はニューヨークの貿易センタービルで、一機は国防総省で、悪の計画を成功させた。しかし一機は何の変哲もない草原に墜落した。テロが失敗に終わったことは明白だった。トッドを中心に勇敢な人々がテロリストたちから操縦桿を奪回しようと立ち向かったからだ。
以来リサは英雄の未亡人として一躍称賛の的となり、マスコミの花となってしまう。非日常の洪水の中で、リサは出産するのである。夫不在で分娩室に入る彼女を思うとき、また涙があふれてくる。
けれど本書は単なる悲しき実話ではない。全ページからリサのひたむきな信仰が爽風を起こして吹きあがってくるのだ。どんなに励まされることか。
ところで題名の『レッツロール!』であるが、その意味は……、ああ、ぜひご一読ください。そしてさっそくリサ母子のために祈りを開始してください。リサは今の今、すぐとなりの国に生きる若き母親なのだから。クローゼットにしゃがみ込んで泣くことがないように。ひざに集まる三人の子どものために生き抜くことができるように。