ブック・レビュー 『レフトビハインド』
池尻 良一
福音交友会 貝塚聖書教会 牧師
聖書の預言を背景に、ダイナミックに語られる終末論の物語
本書は終末論で取り上げられる「携挙」を題材にした珍しい小説である。ある日、ロンドンに向かうジャンボ機から突如として百人以上の人が消失する。それも衣服を残して人だけがすっぽりと抜けてしまって。ところがジャンボ機だけでなく、あらゆる場所で同じことが起こり、妊婦のお腹から胎児が消えてしまったりもする。こうしたスリリングな場面描写は読者をこの後のストーリー展開に巧みに引き込み、その上で作者はフィクションだからこそ可能な手法を用いて終末の現実感を盛り上げていくのである。
主人公の一人ジャンボ機の機長は、妻と息子が消えてしまったことを通して、なぜ自分が残されたのかを問い、過去の夫婦関係から妻子に対する負い目を出発に、これは聖書が記す携挙・患難期であることに目が開かれていく。
もう一人は、ジャンボ機に乗り合わせた気鋭の雑誌記者である。彼はその後の機長との交渉で、彼が取材する政治の世界の異変および国連を席巻して世界統合を謀ろうとする若き指導者の登場などが、聖書が警告する終末の兆候であると理解するようになる。
作者は物語の最初から携挙を前面に押し出す。その理由は本書のタイトル『レフトビハインド』(その意味は「取り残された」)と関係がある。
なぜ自分たちは取り残されたのか。
もはや取り残された者たちに望みはないのか。
ここに作者のメッセージの矛先が向けられている。
本書に登場する「取り残された牧師」が機長に手渡したビデオはそれを解説する。「神の目的は、残された人たちが自分自身をみつめなおし、この世の楽しみや自己実現のあくなき追求にピリオドを打ち、真実を求めて聖書にかえり、救いを求めてキリストに立ちかえることなのです。」(231頁)私自身取り残された者たちが大勢集まる場面には思わず緊張した。
一気に読ませる本書の魅力は「全米650万部突破」を私たちに納得させる。