ブック・レビュー 『世界宣教の展望』

『世界宣教の展望』
福田 充男
RACネットワーク(文脈化研究会) 代表

すべての人が神の宣教ムーブメントに参与できる!

 本書は、Perspectives on the World Christian Movement: A Reader の部分訳で、原書は、世界中の大学や神学校で、もっとも広く用いられている宣教学の教材である。もともと、編者の一人であるラルフ・D・ウィンター博士が開発した「パースペクティブ・スタディ・プログラム」と呼ばれる宣教学コースの読本としてまとめられた。

 このコースは、前身である「Summer Institute of International Studies」から数えると足かけ三十年にわたって五万人近い人々が受講してきた世界的なプログラムで、多くの人々が自らのライフスタイルの一部として世界宣教をとらえ、それを実践に移すことを助けてきた。実際、日本に派遣されてきた宣教師の中にも、相当数の人々が何らかの形でこの教材のお世話になったと思われる。

 原書では一二四本収録されている論文のうちの十三本が厳選されている。このような宣教学の基本文献が日本語で読めるようになったことは、日本の教会が世界に対する神の不変のご目的を理解するための有力な足がかりとなるだろう。ボッシュ著『宣教のパラダイム転換』(東京ミッション研究所)や、本書と同じコンセプトで日本人著者を中心に編纂された『宣教学リーディングス』(RACネットワーク、関西ミッションリサーチセンター、東京ミッション研究所)とともに広く読まれることが期待される。

 神が歴史の中で何をなさり、今何をしておられ、これから何を成し遂げられるのかということを、神の悠久の視点で見させていただくことはスリリングな経験である。すべての人が異文化で福音を伝える者となるわけではないが、すべての人が生ける神の宣教ムーブメントに参与することができる。

 宣教学的に「未伝地」と分類されかねない実情を持つこの国で、日本の教会が、そして読者一人ひとりが、神の世界大のご計画に召されているという事実を直視させる啓発の書である。