ブック・レビュー 『世界宣教の歴史』
エルサレムから地の果てまで
福田 崇
国際ウイクリフ聖書翻訳協会 アジア・大洋州地区総主事
私たちに福音はどう届いたのか。その流れをとめてよいのか。
文献の解題(一二頁~)にあるように、日本では「世界宣教の歴史」についての文献の数が少ないため、網羅的、啓発的、信仰的で適切な手引書が期待されていた。本書は、人物中心にまとめられているので、信仰の読み物としても励ましを受ける良い読み物であろう。何が宣教者を動かしていたのかを知ることができる。私たちは、主の導きによって、それぞれの地域教会の交わりの中におかれているが、その教会がどのような流れから形成されてきたのかを知るうえでも役立つであろう。
また、福音がどのように伝わっていったのかを知ることにより、今の時点での私たちの責任が自覚されよう。宣教の流れがここまできているという思いに圧倒される。私のところでこの流れが止まっていいのか、と。
旧約聖書における世界宣教(二三頁~)は、旧約神学などにより、旧約聖書の中でも世界が視野に入っていたことを補って学ぶことができる。パウロの世界宣教(三〇頁~)についても、ローランド・アレンが書いた「聖パウロの方策か、私たちの方策か?」などにより、歴史を通じて宣教方策の変遷を見ることができる。第三章の中世のキリスト教の世界宣教の中に、東方教会の世界宣教が入れられており、今まで比較的知られることのなかった側面がわかるのはうれしいかぎりである。
宣教の歴史であるので、その背景となる時代の雰囲気・動き・思想などは世界史の学びで補う必要があろう。また、メッセージ(使信)の変遷についても別の角度からのアプローチが必要となる。
本書は、キリスト教二〇〇〇年の宣教の展開を概観するために必要な情報が盛られており、神学校、聖書学校、地域教会の学び会などで用いるのに良い。中村敏牧師の労に心から感謝したい。